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同時刻、日本、東京。

国会議事堂の地下では、総理会議の真っ只中だった。




“揺り戻し”



≪国家が存続の危機に陥った時にその国土全体に起こる異常現象のことです
 国力を消費しての有限のやり直しであり
 力が尽きれば我々の歴史はそこで終わりです≫






「普段ならば、とても信じられないところだが」



そう、一人の男性が物憂げに息をつく。

──第三代内閣総理大臣、山縣有朋。



「…祖国殿は、このことを把握されているのでありますか?」


──第十一代総理、桂太郎。



「それもそうだな」


──初代総理、伊藤博文。



「国の化身が消えることで国が滅亡するのならば、祖国様との情報の共有は必須ではないのであるか」


──第八代総理、大隈重信。



明治の世を作った総理七名の視線を受けた男性は、困ったように瞳を揺らした。



「我々観測者の中でも、その意見はあったんですよ」



軽く視線を巡らせ、彼は手を組み直した。



「元来、国の化身は倶楽部へ入れないんです」



総理倶楽部。
ここは、時空を超えて国の元首たちが集う不思議な空間。

国そのものである、“生きている”化身は入ることができないのだ。



「私たちは既に居ない者ですし…」


──第四代総理、松方正義。



「松サァ、えらい直球で言いよったな」


──第二代総理、黒田清隆。



「かまいまへんやろ、どうせほんとのことやし」


──第十二代総理、西園寺公望。


そのやり取りに軽く苦笑したメガネの男性が、少し真面目な顔つきに戻る。



「“揺り戻し”については、皆さん、理解してもらえたと思います。ですから、続いて“国”と“国の化身”、そして“揺り戻し”との関係を説明しますね」



国の化身。
国そのものであり、国民の状態を映す鏡。ひとつの国、および地域にひとり以上の化身が存在する。



「酷なこと言うようですけど、本来、化身はいなくても国は成り立つんですよ」



ただひとつの例外である、揺り戻しがあった場合を除いて。




<国造りの神か、はたまた国家そのものが抵抗するんです

 そして戻すんです

 まだ存続している時代に我々ごと>

間違ってはいない。しかし、だ。本当に国造りの神が、国家が抵抗しているかと問われれば、その答えは(いな)だ。揺り戻しにおける、必要不可欠だとされているもの。それこそが、国民の感情である。

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蟻。 - 三六 月さん» すみません!うわ、今気づきました…。ご指摘、ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年12月6日 21時) (レス) @page1 id: 7989c22791 (このIDを非表示/違反報告)
三六 月(プロフ) - 初コメ失礼します!とても、面白いです。あの、ルビ振りの所が気になったんですけどしてる方以外は消した方がいいかもです...そういうものでしたらすみません!更新頑張ってください! (2022年12月6日 20時) (レス) @page2 id: c56d0b069e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蟻。 | 作者ホームページ:   
作成日時:2022年12月6日 16時

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