＊絶望する男 ページ8
「……ない」
時刻は昼下り。その日はポカポカと暖かく、空も快晴だった。
そよそよと吹く風は体を包むような安心感がある。鼻がムズムズするのは春風が運んでくる花粉のせいだろう。
そんなことを考えながら鼻歌交じりで道を歩いていたその時、ポツリと声が聞こえてきたのだ。
何となく気になってキョロキョロと声の主を探すと、少し離れた道の端に男が立っていた。
「……どうして。この前まであったじゃないか」
頭を抱えてぶつぶつ呟く男。
『無い』ということは何か失くし物でもしたのだろうか。
「あの、何か探してるんですか」
声をかけると、男はゆっくり振り返った。
くせっ毛の�酥韻棒擇貭垢量棔�高い身長。
そして彼の顔は、魂が抜けたように虚ろな目をしていた。相当大事なものを失くしたのだろう。
真っ白な肌と端正な顔立ちがまるで人形のようだな、と思う。
すると男の細いピンク色の唇が小さく動いた。
「……無いんだよ」
「何がないんです？」
男は細く長い指で前を指した。
そこにあるのはなんの変哲もない自動販売機。
はて、と首を傾げてそれを見つめる。
「オレンジジュースが無い」
「はあ？」
あまりにも予想外の答えにすっとんきょんな声を上げてしまった。
オレンジジュースってあのオレンジジュースだよな？
あんな絶望的な顔するか？家の鍵でも失くしたと言ってくれた方が納得がいく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺぽん(プロフ) - わわわさん» イベントに参加させていただきありがとうございます。神作品だなんて嬉しすぎます🥰これからも面白い物語を書けるように練習していきますね🙌 (2023年3月24日 20時) (
レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
わわわ - 作品の参加、ありがとうございます！！色んなシチュが一つ一つの個性を持っている。でも全部面白い…神作品や… (2023年3月24日 20時) (レス) @page26 id: 227f2d1e2c (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - 十六夜紅葉@斎藤一推しさん» そう言っていただけて凄く嬉しいです！これからも思い付いた場面を投稿していくので、不定期ですがぜひ楽しんでくださいね。 (2023年2月16日 17時) (レス) @page25 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜紅葉@斎藤一推し(プロフ) - 面白いです！これからも頑張ってください！ (2023年2月16日 17時) (レス) id: 20647828cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぺぽん | 作成日時：2022年7月12日 22時
