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目「あったかいよ。あの家」

「っ…」

「日当たりもいいし」ってみどり先生みたいなことを言うけど、彼の言う「あったかい」はきっと家の作りや日当たりだけが理由じゃないんだろう。

でもやっぱり、樹くんが言ったみたいに男の人ばかりの家に女が1人混ざってるなんてきっとみんなが過ごしづらいと思う。…頭では分かってるんだけどな。

目「岩本くんにもっかい話してあげよっか」

「大丈夫」って言えないのは、なんで？

樹「俺話聞いてて思い出したんだけど、俺のマブダチにきょもってやつが居てね？そいつと佐久間くん幼馴染みらしくて。そいつが言ってたんだけど、佐久間くん最近迷子のお家探しに手焼いてんだって。」

「え？」

樹「また猫でも拾ったんじゃね？って俺らの中では話してたんだけど…Aちゃんのことだったんだ？」

せっかくさっくんたちが良くしてくれたのに、断っちゃったから…怒ってるのかと思ってた。でも違ったんだ。

目「"Aちゃん全然頼ってくんない"ってボヤいてたよ」

怒ってたんじゃなくて、拗ねてたんだ。

樹「どうする？
ホテルまで送ってってあげようか？」

真っ暗な、あの仮初の家に？

樹「それとも…お迎え、呼んだげようか」

にぃっと笑った樹くん。

「迷子じゃないもん…」

だけど、

樹「目黒、佐久間くん呼んだげて」

目「かしこまりました」

「……」

2人を止められなかったのは、いや止めなかったのは…

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佐「ハッ…お待たせ。帰ろっか？」

さっくんが私なんかの為に息を切らして走ってきてくれる人だってことを知ってたから。
その優しさに…甘えたかったから。

樹「付き合ってくれてありがとね」

「こちらこそ…ごめんね、途中で」

樹「いーのいーの。
埋め合わせの口実できんじゃん？」

悪戯を思いついたみたいに笑った樹くん。…慣れてる。
でも下心なんてこれっぽっちもないんだろうな。
気まずくならないように冗談を言ってくれる優しい人。
私の周りは優しい人ばかりだ。

「またご飯行こうね」

樹「またね」

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目「…樹くんが手こずるなんて珍しい。」

樹「あの子には駆け引きとか通用しねぇんだよ…」

目「んふ俺みたいな奴と同じ家に住むなんて心配ですね？」

樹「ほんとだよ……通おうかなおまえらの家」

そんな会話がされているなんて露知らず。