▽ kmmc side ... ページ30
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「 ＿＿ …っ、ねえ！Aちゃんの罪って、なんなの 」
A。
その言葉を聞いてパッと後ろを振り返ると遠くに見えるのは見慣れた茶髪とその奥にいる少女の影。
自販機に向けた手は行き場をなくして宙を彷徨った。
まさか、なんて淡い期待を抱いていると少女は振り返りながら屈託のない笑顔で何かを言った。
その声がいつも画面越しから流れてくるアノコの声で。
期待が恋に変わった瞬間だった。
＿＿＿
＿＿＿
日陰Aは僕にとって未知数である。
コミュ力はないくせに誰かが困っていたり泣いていたら放っておけない性分なようで、沢山のライバーに慕われている。本人は気づいていないようだが。
そのくせオフコラボは絶対に拒否するが「いつかね」と淡い希望を撒き散らす。
魔性だ、なんて言われたらその通りだと頷こう。
まさに僕も、その淡い希望に魅入られてしまったバカな男であった。
だから、なんて言ったら言い訳になるだろう。
しかしそんなことはとうにわかっていた。
頭の中で警鐘が鳴る。
「 これ以上踏み込むな 」と。戻れなくなると本能が告げているのを無視した。
それでも、僕は君の手を掴みたいから。
その笑顔の先が僕じゃないことに腹が立ってしまったから。
しかし、僕の手を掴んだのは彼女ではなかった。
後ろからグイッと服を引っ張られ変な叫び声を上げるとそこにいたのは彼女の片割れ。
月ノ美兎。
『 …いいんちょ、 』
「 剣持さん、悪いことは言いません。貴方はまだ戻れます 」
『 戻れる、ってなにをですか 』
真っ直ぐ此方を見据える彼女の瞳が僕を貫く。
それを見た僕は自嘲気味に口を開いた。
『 戻れるとか戻れないとか、僕にはどうだっていいです。戻れるなんて言うならそれは彼女と会ったこと自体が！その分岐点なんじゃないんですか 』
「 …確かに、その通りだとは思います。ですが貴方はその手を掴んでいない。戻れます、必ず 」
『 だから、僕は！！ 』
背後から幼さを帯びた声が聞こえる。その声はやけに聞き覚えがあって。
「 …っ、お姉ちゃん 」
そう呟いた委員長の口から滾れ落ちた言葉で目の前にいる彼女を認識してしまった。
楽しそう、混ぜてよ。なんて言う彼女を拒むことなんて出来るわけもなく。
＿＿＿ 嗚呼、もう戻れない。
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作者名：な る せ 。 | 作成日時：2024年1月7日 2時
