教育係の田中さん。［更新停止］ (ページ6)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:25,794 hit

006 ページ6

．

．

『やばい』

ミスった。ミスってる。

よかった、まだ田中さんにチェック頼む前で。

「どうした？」

自分がしてた作業を止めて

すかさず聞いてくれる田中さん。

『や、ちょっと間違えちゃったので

今から直します』

「お、偉いじゃん

ちゃんとミスに気づいて」

ミスしたのにそう褒めてくれる田中さん。

子供扱いされてる？

「でもそれ今日中だからね？」

『急ぎます！』

そうは言ったものの、ミスしたせいで

もともと入力してあった式すらもぐちゃぐちゃになって

もう何がなんだかわからなくなってる。

やってしまった。

「A帰んないの？」

データと睨めっこしていれば慎ちゃんにそう言われる。

『え、待って

今何時？』

「7時」

『やばい』

「俺手伝おうか？」

『ううん、大丈夫

ありがとう』

「そ？あんま無理すんなよ～」

そう言い残して帰っていく慎ちゃん。

「Aちゃん」

『はい』

「残業ですか」

慎ちゃんの次は田中さんが声をかけてくる。

なるべく残業しないようにって言われてるから。

『すみません』

「樹さん」

『はい？』

「樹さんって言ってくれたら

手伝ってあげる」

『いや、でも』

「それずっとやってんじゃん。

もう自分じゃわかんないんでしょ？」

う、図星。

ここは自分の羞恥心は捨てるべき？

いや、潔く捨てよう！

だってもうわかんない！

『樹さん』

「ん？」

『あれ、助けてくれるんじゃ？』

「じゅったん、助けて」

『はい？』

「じゅったん、助けて」

『もうちょっと頑張ってみます』

「うそうそ、どこ？」

そう言って椅子ごと移動してきた田中さんは

すごく近い。

『ここの式がもうぐちゃぐちゃで』

「あー、ぐちゃぐちゃだね」

わたしの前に身を乗り出してマウスを使って

キーボードを打って、真剣な田中さん。

目の前にある田中さんの顔はかっこいい。

「ね、Aちゃん」

『はっ、い』

急に名前を呼ばれたから思わず声が裏返る。

「ハッ、声裏返ってるよ」

そう言って目の前にある顔がこちらを見るから

身体が固まる。

だって、顔の距離20センチくらいだよ？

「Aちゃん、俺のこと見過ぎね」

そう近いままふって笑う田中さん。

はい、落ちました。

恐るべし爆モテじゅったん。

．