教育係の田中さん。［更新停止］ (ページ5)

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「そう言えばさあ！」

急に何かを思い出したように言う田中さんに

少しびくってしてしまった。

「ね、今Aびくってしたね」

『うん、した』

「ハハっ！かわいい」

え、かわいい？また来た？

『すみません、もう一回、』

「言わないよね」

「Aの聞き間違いじゃない？」

『あ、うん？』

いや、確実に言われたと思ったんだけどな。

「ね、俺思ったの。

なんで2人とも俺のこと樹って呼ばないの？」

『はい？』

「Aちゃんに至っては、

俺、樹さんって呼んでって言ったよね」

『すみません』

「俺が下の名前で呼んでんの、

どうせチャラいとか思ってたでしょ」

『やべ』

もしかして心の声が聞こえてた感じ？

「やべって声に出ちゃってんのよ

俺、初めて教育係になるから

2人と早く仲良くなろうと思って」

わたしとしたことが。

完全に田中さんのことを誤解してたよ。

「あれ？樹じゃん！」

田中さんのことを見直した瞬間、

綺麗なお姉さん二人組に声をかけられる田中さん。

「おー、」

「やだ、ほんとだ」

「何してんの？」

「何って、見てわかんじゃん」

「あー、舎弟探し？」

「ねえ、それやめれる？」

そう田中さんをからかってから、

楽しそうにお店を後にしたお姉さんたち。

「えっと？」

困惑してる慎ちゃん。

え、舎弟？

初めての教育係だからって

わたしたちに気を遣ってくれてた田中さんはどこに？

「いや、待って！まじで誤解！」

「そ、そうっすよね！」

「そうそう、いやあいつらまじでやってくれたわ」

舎弟。わたしと慎ちゃんが、舎弟。

『田中さん』

「ん？」

『パン、買って来たほうがいいですかね』

「いや、待って？」

「A、今からピザだからパンだと被っちゃうから」

『あ、そっか』

「え、ちょっとそれやめれる？

お前ら楽しんでんだろ？」

「そんなことないっすよ！」

『ないです！』

そう言って慎ちゃんと顔を見合わせれば

思わず吹き出しちゃって

「馬鹿にしてるよな？」

ってちょっと低い声で言う田中さん。

「すみませんでした」
『すみませんでした』

そう謝れば、

「ハハ！」

って田中さんが笑ってくれて

田中さんってちょっとイカつめなのに

ちゃんとギャグもわかるいい人なんだな。

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