カフカは笑う。/rbr ページ34
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暖かい人が好きだ、ぎゅっと抱きしめてほしいのだ。
意味なんて聞かないでくれと笑ったカフカが、俺の心臓を盗むように。
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朝だ。目覚ましを設定していなかった休日、時計を見ると午前6時。こんな時間に起きるのはとても珍しい、少しの違和感と少しの達成感を味わいながら上半身を起こそうとする。
が、手が思い通りに動かない。俺は視線を手元に移した。すると自分の体が緑色になっている事がわかった、どうやら俺は大きな毒虫になったらしいのだ。絶叫しようにもできない、あったはずの器官を探しては絶望した。
何本もの足が自分の物になっている、動かし方もわからないのだ。俺が必死に足を動かす練習をしていると、自分の体が人間らしくなっていくのに気がついた。
「もとに、もどったん…?」
声もだせる、一瞬の奇怪な出来事に目を疑う。とりあえず「悪い夢」だったということにしとこう。俺はベッドからおりていつもどおり朝食を食べた。
「…おぇっ」
まずい、いつも食べることのできるコーンスープが飲めない。泥水のような味がする、急いでトイレに駆け込み嘔吐した。
「なん、でや」
味覚が壊れている、すると目もおかしくなってきた。もやもやする、瞬きもできない。気付けば低い視界が広がっていた。また自分の体が虫になっている事に気がついた。
夢じゃ、ないんや。
夢であってほしかった、夢であるべき事なんだ。俺は助けを求めようと外へ飛び出した。ダメだ、飛び出したら非難の対象になってしまうではないか。
どんどん脳が機能しなくなる、人間らしい思考判断ができなくなってきた。
ああ、虫って生に縋ってたって無駄なんやな。
「でかい虫だ」
「でかい毒虫だ」
「気持ち悪い」
「通報しよう」
「逃げたぞ」
「追え」
「捕らえるんだ」
「それが正しい、それが正義だ。」
人々の声が聞こえる。
電波ジャック、途絶えてしまえばいい。
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