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『 大丈夫ですか 』
私に投げかけられた言葉を理解するまで約3秒。
声をかけられるとは思いもしなかったので、
目をさんさんと見開いて彼の方を見てしまう。
顔立ち綺麗な、男の子。
青みがかった様な色の黒髪に、
これまた黒縁のメガネが重みを感じさせることなく、爽やかに彼を演出していた。
「………平気、です。」
素直になれず、思わず嘘を吐く。
見知らぬ人に心配をかけさせたくない、
そんな気持ちが泣きそうになった気持ちのまんまの私の心持ちを制した__
___それもあるだろうけど
かっこいい男の子の前で恥ずかしい格好を見せたくない。
そんな気持ちも少なからず2、3割はあったのだと思う。
…ああ、素直になれない。
こういうところなのだろうか。わたしが失恋しちゃうポイントとは。
名前も知らないその爽やかな彼の顔をじとり、
見つめながら、
心の内で苦笑いを浮かべた。
「……使って?」
ふいに差しだされたハンカチ。
目に良さそうな緑色で、まだあまり使われていない新品の様に見える。
…この青年は、どこまでお人好しなんだろうか。
いいです、
そう言ってなんとか押し返そうともしたのだけれど
当の本人はそれを許しちゃあくれない。
目を細めて、「遠慮せずに、はい」
と渡されちゃあどうしようもない話だ。
しぶしぶ受け取り、柔らかいそれでぎゅっと目を押さえた。
「それと…ここで話してちゃいずれ人、来ちゃうよ。
ぼく、いい場所知ってるんだけど、良かったらそこ行かない?」
……いい場所、とは
どこのことなんだ。
怪訝に爽やか青年をみつめる。
彼は苦笑いした。
「とにかく、ここよりもいい場所だから。
ついてきて」
「…え?あ、まっ、!」
有無を言わさず手をきゅっと握られる。
ふわり、香る石鹸のにおい。
とっても心地よい、香り。
ときん、どきん
とくん、どくん
2人の足音しか聞こえないはずなのに、
うるさく、うるさく。鳴る。
あれ、…恋、してきたはずなのに。
なんで、なんでだろ。
…こんな胸の鼓動、しらない。
初めての感覚に、おもわず言葉を失った。
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