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▽
夜も完全に更けて、俺達は寝ることにした。
俺は2人に気を使い、2人を同室のベッドで寝るよう勧め、俺はリビングのソファで寝ることにした。
ソファに体を横にして寝ようと試みるも、俺はすぐ近くにいるであろうAのことで頭が冴えて眠れずにいた。
キヨ「寝れねぇ…」
まったくもって眠れず、寝返りを何度も打っていると
「…キヨ」
キヨ「うおっ！…A、どした？」
「私も、眠れなくて」
どうやら眠れなかったAが寝室から抜け出してきたようだった。
なにか暖かい飲み物でも、と思ってきたらしい。
俺にも入れてくれるというので、お言葉に甘えることにした。
「ココアでいい？」
キヨ「おう」
「おっけ」
カチャ、カチャ、と小さく食器のぶつかる音が響く。
俺はココアを入れてくれているAの姿を横目に見ながら、話しかけた。
キヨ「…あのさ」
「ん？」
キヨ「Aは、レトさんのどこに惚れたの？」
こんな質問。
傷つくに決まっているのに。
でも聞きたかった。
Aの口から直接。
そうすることで、諦められると思ったんだ。
「そうだなあ。いろいろあるけど、特にここっていうところはないかな」
キヨ「え、そうなの？」
「うん。だって、レトには良いところも悪いところもあって、私は全部が好きだから」
キヨ「そ……か…」
なんて、上手いんだろう。
Aは、俺の扱い方をまるでわかっているようだ。
良いところをハッキリ言ってくれたら、そこをマネすれば、もしかしたら、なんてずるい考えを持っていた自分が恥ずかしい。
「急にどうしたの？そんなこと聞いて」
Aは少し笑いながらそう言った。
俺はAに近づき、ココアをスプーンで混ぜている右手に触れた。
「…キヨ？」
キヨ「…俺、好き」
「…なにが？」
キヨ「……Aが」
言ってしまった。
言うつもりなんてなかったのに。
口が滑ったとは、まさにこのことだろう。
俺はAを見つめる。
そしてAも、俺を見つめる。
俺達の間に、奇妙な静寂が訪れた。
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