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翌週、皆がお昼ご飯を食べ終えた頃
また俺は一人電車に乗り込む
今日は何故だか少し混み気味だ
いつもの俺の席もガラの悪い兄ちゃんに座られていた
仕方なくたまたま空いていた席に座った
スマホで電子書籍を読みながら彼女が乗ってくるのを待った
彼女が乗り込む駅につく
俺は落とし物の準備をして彼女を待った
するとたまたま俺の隣が空席になった
俺はさほど気にもとめずに鞄を漁っていると誰かが隣に座ったようだ
ふとそちらを見ると、俺が見つめ続けた彼女だったのだ
……思わず２度見
それからすぐに下を向く
ヤバい、これはヤバい、俺のボキャブラリーもヤバい
こんな奇跡ってあり得る？彼女が隣に座ったのだ
俺は彼女が電車から降りるまで、１ミリも身動きがとれなかった
その間彼女はずっと本を読んでいて、俺には一切目もくれなくて
余計に、自分ばっかりが気にしていることを実感させられた
幸福と苦痛の入り混じった時間が１０分程流れて、彼女が降りる駅につく
彼女はいつも通り、ここで席を立って、開いたドアから出て行ってしまう
最初に考えていた目論見をすっかり忘れていた事に気づいてしまって
今週も失敗か、とまた肩を落とす
ぱたっ
無機質な音がした、聞こえた方に目を向ける
そこには白色で可愛い刺繍が入ったパスケースが落ちていた
思わず立ってそれを拾ってしまう
誰のだろう？
その中身を見た、決して私利私欲のためではない、落とし主を見つけるためだ
でもちょびっとだけ、期待していたのかもしれない
中には２枚のカードのようなものが入っていて、１枚は車の免許証だった
名前はAさんというらしい
そして写真に映っていたのは、紛れもなく俺がいつも見つめ続けた
生真面目な表情をした彼女だった
俺は閉まりそうになった電車から飛び出して、彼女を探す
すると目の前に現れたのは、パスケースを探しに来たであろう彼女の姿
すぐに話しかけた、緊張などなかった、相手は困ってるのだから
「あ、あの！これ、あなたのですよね」
緊張してないつもりではあったけど、少し声はうわずった
「あ、ありがとうございます！改札通ろうとしたら無くて驚いてたんです」
初めて聞いた彼女の声
思ったよりも可愛い感じでこっちも違う意味で驚いた
「本当にありがとうございます、じゃあ」
「あ、はい」
俺たちの初の会話はこれだけで終わったのである
そして後ろで電車が通り過ぎていった
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