3 秒 。⇔ Fj . ページ2
▽
『 3秒、目が合うだけで好きな人かどうかわかる。 』
そんな魔法みたいなことがあるんだと思った。
「 Aさん? 」
そんな素敵なことがあるんだと思った。
＊
「もう、最悪〜...」
なんで課題忘れちゃったんだろう。
オレンジが黒に飲み込まれる少し手前の空。
その横を、溜め息で進む。
みんながみんな、喜びの顔で教室を出ていった
金曜日、天気のいい日だった。
前々から持たされていた課題を忘れたことに
気がついたのは、つい、さっきのことで、
歩道橋を渡って直ぐの学校まで、ちょっとしたおつかい。
なんで忘れたんだろう、なんてさっきからきりの
ないことばかりを考えて、2-3の前をゆっくり通り過ぎた。
暗くなる前に、帰ろう。
...ちょっとだけ、怖いから。
「あ、よかったぁ、あった、」
今日が土曜日でよかった。
先生もいるから、鍵、あいてた。
良く考えれば奪われてるはずなんてないけど、
昨日通り、そこにあることに、ちょっとだけの安堵。
休み明け直ぐの提出になってるから、
近い席のレトさんとかに、うつそー、みたいな
軽い気持ちでとられてたらたまったものじゃない。
また月曜日、レトさんはあわてて書いてるんだろうなぁ、
相変わらずの、ギリギリ登校で。
レトさんの机の中を見て、ひとりで笑う。
「よし、帰ろ」
もうそれしか選択肢がなかったと思う。
先生に無事回収しました、の報告をして、
靴履き替えて、歩道橋を渡ろう。
控え目な音を立てて、ドアを閉めたあと、
ちらっと見た外は、少しだけ、暗かった。
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