婚約者は教祖らしい 【童磨】壱

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「Aを部屋に閉じ込めなさい」

「あなた！」



お父様がそういうと即座に立ち上がり、それはあんまりだというお母様


それでもお父様は決めたことだと意思を曲げない



「想いを断ち切り、先程の発言を反省し詫びるまで部屋から出してはならない」

「かしこまりました」



お手伝いの人が来て、私は強制的に立たされる


…イヤ。ダメそんなの


閉じ込められたら私、童磨に会いに行けないじゃない



『お父様！なぜいけないのですか！なぜ許してくれないのですか！』



両腕を掴まれて連れて行かれる中、必死に抵抗し、お父様に訴える。でもお父様は答えてくれない。



『お父様！お父様！！」



扉が閉じてしまうその瞬間まで叫んだ


もう出られないように扉が閉じられても、私は叫んだ


真っ暗で何も見えない扉をずっと叩き続けた



…童磨、私



どうしてかな、あなたと一緒になることをなぜ認めてくれないのかな


さっきは泣かなかったのに、ボロボロと涙が流れてくる



やっぱりこの家の娘に生まれたことが恨めしい



自由に人に恋をしてはならないなんて、私は嫌だ



ねえ童磨、この間みたいに私を迎えにきてよ



きみは手がかかる子だって笑ってくれない？






目を覚ますと辺りは明るくなっていた


どうやらまた気を失ってしまったらしい


ズキズキと痛む頭を上げようとするけど、頭が石のように重たい



「A様…」

『ヒナ！ヒナなの！？』

「はい…ご飯を用意したので、少しだけでも召し上がってください… 」



どれだけ叩いても開かなかったあの扉が、ヒナの手によって開かれる


ヒナは私の目の前に膳を置く



『ヒナ』

「A様…」



黙って立ち去ろうとするヒナの腕を掴む



『お願い。ここから出して』

「A様…そんなことできません…」

『お願い！ねえお願い。私はあの方に会いに行かなくてはならないの』

「A様…ごめんなさい…」



私の手を振り解いて部屋を出て行くヒナ


私は床に項垂れる


溢れ止まらない涙を撒き散らし、それでも願い続ける



『お願い！！ヒナ！！！お願いよ！！』



童磨の元へ行かないといけないの


私は童磨が好きなの。もう、戻れないの


開かない扉をドンドンと押す反動で、ヒナが用意してくれた膳がひっくり返る


溢れる味噌汁を見る過程で、ある物が目に止まった

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