婚約者は教祖らしい 【童磨】壱

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「な、なにを言っているの？」

『私は、結婚できません。』



動揺したかのように声を荒げる母


またフワフワとした感覚に陥る



「あなたは自分の言っていることが分かっているの？」

『重々承知しております』

「ではなぜ！」



お母様、ごめんなさい


私は自らのせいで、全くの別人に感情を抱いてしまったのです


もう戻れません


この想いを消し去ることはできません


どう頑張ってもあふれてくる涙


止まることを知らないみたいだ



「言ってご覧なさい！嫌だという理由を言いなさい」

『申し上げられません』

「なんですって？」

『どうか「認められないわ！」



お母様の声がギンギンと頭に響く


世界が真っ白になるのがわかった


童磨のあの凛とした姿が思い浮かぶ


どうしても認められない。


それならば…


私は意識を手放した




目を覚ますと夜だった


辺りは真っ暗で部屋には私ひとりだけだった


ヒナと夏妃の声が聞こえてくる


お母様は帰ったのだろう


よかった、起きてまた色々言われてしまっては精神的に参ってしまう


寝ているのも気が滅入ってしまうため、部屋から出て縁側に腰掛ける


童磨、あなたは今なにをしていますか？


懐から簪を取り出して見る


困ったように眉を下げて笑いかけてほしい


きっと、きみは本当に手のかかる子だ、そう言って笑ってくれるでしょう？



『童磨…』



今日の月は三日月


満月もいいけれど、三日月も負けないくらいに綺麗だ




「おやおや、俺を呼んだかい？」

『っ！？！？』



庭に目をやると童磨が立っていた


これは夢…？


よく思い出せばさっき見た夢と似ている


ほら、夢なら早く覚めてよ



「A？」



目を擦る


童磨がここにいるはずがない


自分の手を抓ってみる


…痛い


これは夢ではなくて、現実？



「おーい、聞こえているかい？」



あぁ、現実なんだ


会いたかった人がここにいるんだ

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