婚約者は教祖らしい 【童磨】壱

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白粉を顔に塗り、唇には真っ赤な紅を。


いつも髪は下ろしていたが、今日はマガレイトという髪型にしてみた


ハイカラな髪型


童磨、どんな反応するかな


いつもと違うから驚くかな？


ドキドキしながら用意された茶を飲む


まだ童磨は到着していない


一刻も早く会いたいと言うのに


杯の中の茶はどんどん減っていく



「相手の方が到着されたようですよ！」



ヒナが慌てて部屋に入ってくる


出迎えないと！！


素早くその場に立ち、扉を見つめる


ガラリと開く扉


やっと、やっとだ…



『ど…！？』



え、？


待って誰この人


私の瞳には童磨ではない、全くの別人が映る


髪は黒く短く


髭も生えている


ぱっと見、二十代後半の男


童磨とは似ても似つかない人


もしかして部屋、間違えてたりしてない？


今からここで縁談の顔合わせですけど！


部外者ですよね？



『あ、あの！「お待たせしてすみません」



髭面の男はハァハァと息を切らしながら言う



『え、えっと、私は万世極楽教の教祖様との縁談があるのですが、貴方様はどうやら…お部屋を間違えていらっしゃるようですね？』



ここは旅館というか、宴が開かれるような場所だ


部屋を間違えてしまうことはよくあることだ



「あ、申し遅れました…私、万世楽園教の教祖の町賀 衣五郎(まちが いごろう)と申します」



万世楽園教？


ん？万世極楽教の間違いではなくて？


よろしくお願いします、そういうと町賀と言う人は私に手を差し伸べる


待って待って


握れないよ、私の手を握るのは童磨じゃないとダメなの


私は手を握ることはせず、礼をしてみせる



「いつも寺院にいるから、昼間から人酔いしてしまいまして」

『そ、そうなのですね…』

「あ、さあ、座りましょう」



机を挟み向き合って座る



「一色Aさん、ですよね？噂通り美しい」

『えっ、あ、はい、そのようなことは』


　
西洋の言葉で言えば、ダンディーとでも言うのだろうか


確かに男前なのかもしれないが。


童磨ではない


これは間違いだ、絶対に何かの間違い


童磨を捉えるはずだった瞳には涙が浮かんでくる


下を向いた瞬間、涙がポトリと落ちた

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