婚約者は教祖らしい 【童磨】壱

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「さあ、もう日付も変わってしまった」

『そうですね、』



夜市が立つ日は、必ず日付が変わる瞬間に花火が上がる


もうそんな時間だったのか


帰らないといけないみたい



「家まで送ってあげよう」


立ち上がり私に手を差し伸べる教祖


あぁ、なんて優しいんだろう


あの日寺院で私に手を貸してくれた男性を思い出した


きっとこの人が優しいから、みんな優しいんだろうな


暖かく感じられるんだろうな


私は教祖の手を握りしめて立つ



「家はどっちだい？」

『いや、申し訳ないので自分で帰ります…』



家、反対側だし。


多分ここからちょっと歩くし。



「こんな夜中に、女の子ひとりで歩かせるわけにはいかないよ」

『いや、でも…』

「俺が無理に連れ出したんだ、だから送るよ」



あ、そこはちゃんと自覚、あるんだ(汗)


あるならちょっと安心した



「さ、行こう。こっちから下りよう」




ギュッと


また握りしめられる私の手


やっぱり冷たい


こんなに手が冷たくて、寒くないのかな、


少しでもこの人の手が温まりますように


そう願って私は手を強く握り返した







「ここでいいのかい？」

『はい、大丈夫です』



あっという間だった


おば様の家までゆっくりと歩いていたはずだったのに




「惜しいなあ」

『はい？』

「このまま俺の寺院に来ないかい？」



幼子のように拗ねて、駄々をこねている教祖




『ごめんなさい、でもきっと、次に会う時にはいい報告ができるはずです』

「なかなか酷な事を言うねえ。それは俺にとって悪い報告だよ」



顔を見合わせて、お互いにクスクスと笑い合う



『楽しみにしていてくださいね』

「はぁ…きみって人は…やっぱりこのまま寺院に連れて帰ろうかな」

『まあそう言わずに。近々訪ねますから。待っていてください。約束です』



そう言って私は小指を差し出す


教祖の小指と私の小指はゆっくりと絡み合う


やっぱり冷たい


指きりの歌を歌ってあげる

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