婚約者は教祖らしい 【童磨】壱

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『どうして今は一人なんです？』



これから花火だって上がるのに


女と一緒に外に出ていたのだから、一緒に見たいはずなのに



「信者はもう家に帰したんだよ』



へぇ〜

これからまた他の信者と会うとか？



「きみのことが心配だったからねえ」

『えっ？』



心配ってなに？


本当に私のことを気にかけてくれていたの？


絶対覚えてるはずがないと思ってたのに、全部覚えていてくれた？



「それに、俺も一人になりたかったんだ」



一人になりたかったんだ…


なんか、安心した…


ホッと肩の力が抜けていくような気がした


なにを安心してるんだって感じだけど


呆れちゃう


ふと目の前の教祖に顔を向ける


ニコニコと無邪気すぎるくらいに笑っている


気に食わない笑顔



「今日は満月だ、花火も上がることだし、きみもどうだい？俺はいい場所を知っているんだ」

『え、いや、遠「良いではないか！行こう行こう！」



遠慮します、そう言おうと思ったのに遮り言葉を続ける教祖



『いやだからいいって…っ！！！」



繋がる手


いや、正確に言えば手を引っ張られた


半ば強制的に席を立たされ、教祖と私は店を飛び出す


えっ、ちょっと待ってほんとに！



『おばさん！お釣りはいらないから！』



顔見知りだとは言え、危うく食い逃げになってしまうところだ


人攫いかと慌てて追いかけてくるおばさんにお金を渡す


ほんとにコイツぶっ飛んでる…


そういえばこの人、一人が良かったんじゃないの？


なんで私を連れ出した？


…わからない。この人のことがわからない


ズンズンと進んでいく教祖の背中を見つめる


この人の背中、大きいな。


肩幅広いし。


この間はよくわからない服着てたけど、今日は着物着てるから、たくましく見える


ふと繋がれた手が気になった


異様に冷たい気がする


ほら、手が冷たい人は心が温かいって言うけどさ


この人、確かにぶっ飛んでるけど、私のこと気にかけてくれてたんでしょう？


教祖なんてやってるくらいだから、きっと心が温かいってことじゃん


でも、それにしても冷たいと思う


生きている人間ではないような


まるで死人のような手の冷たさ


不思議な感覚だった

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