婚約者は教祖らしい 【童磨】壱

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ちょっとなによあれ



女と歩いてるなんて



あの教祖、女、いるってことでしょ？



私、仮面夫婦になっちゃう？



まだ結婚してすらないけどさ、相手に女がいるって分かったら辛くない？



私、愛されずに終わっちゃう？



それじゃあ、ものすごく馬鹿らしくない？



心の中で、ずーっとひとりで考える



そうでもしないと、私の心は落ち着かない




「あの、A様……A様ぁ…？」



急に走り出した上に、急に真顔になって机の上のお茶を見つめるA



そんな主を見て、心配しないはずもなく



ヒナは恐る恐る声をかけてみた



『ん、』

「あの、私、奥様に頼まれたものを買い忘れたので、ちょっと行ってきますね」

『んー、うん』



上の空でヒナが席を離れたことに気がつかないA



私、幸せになれないんだきっと…



あーあ、刀も握れず、色の呼吸も継ぐことも出来ず、挙げ句の果てには望まない結婚もして愛されず



悲しすぎる



私…


私って…


涙が溢れそうになる


ここで泣いたら駄目なのに



「おやおや、この間のきみ」

『…』



ずっと茶を見つめていたが、ヒナが座っているであろうところからあの声が…


顔を上げると目の前には教祖


なんで


なんで私を見つけたんだ…



「どうして俺を見て見ぬふりしたんだい？」



悲しそうに言うのに、笑顔で聞いてくる教祖



『…お久しぶりです』



とっさに出た言葉はこれ



「久しぶりだなあ！俺はあれからきみのことが気がかりで仕方なかったんだ。で、きみはなぜ俺を見て逃げたんだい？」

『見ていません』



女を連れて歩いてたから逃げたなんて言えるはずがない


だってまだ私はこの人にとって、なんでもない存在だから…



「そうかい？俺はきみを見たと思ったんだが…」

『気のせいですよ』

「うーん」



しつこい！相変わらずしつこい！


右手で顎を持って、頸を左右に揺らしてみせる教祖


もういい！


私の負けです！



『隣にいたあの女の方は、教祖様の恋人ですか？』

「ん？」



頭の周りにハテナがたくさん浮かび上がっているのが見える


分からないってことは、たくさん相手がいて、今日は本命の相手ではなかったということだろうか、



「あ、あの女の子は信者だよ！」



信者ねえ…


あの女の人は二番目とかありえるんでしょう？


一番大事な信者は他にもいて、私はその一番になれない


ただの妻…

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