婚約者は教祖らしい 【童磨】壱

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最初はお母様にいつ結婚の話をされるか分からなくて、ビクビクと過ごしていたがそんな気配は全くなく、あれから数日が経った



いつのまにか不安な気持ちは消えて、上弦だった月は満月になっていた



「A様！あの甘味処の団子、食べましょうよ！」

『待ってよヒナ、今行くから』



今日私は、ヒナと一緒に夜市に来ている



この夜市は満月の日に必ず出る市で、通りはとても騒がしくなる


いつもは夜になると閉まるお店も、満月の日だけは夜まで営業していて、甘味処も例外ではなかった


ヒナはすぐそこに見える甘味処を指差して、幼女のように目をキラキラとさせている



『いいわよ、ヒナ。行きましょ！』



通りに並んでいた着物の生地を見ていたが、どれも私の気分には合わないため買うのは諦めた


今まではピンク色の生地を好んでいたが、何故だか今は淡い青色の着物を着たかった


おかしな心境の変化ね、なんて思いながらヒナの元へ向かう


前にお団子買ってあげるって言ったもんね


たくさん食べさせてあげるね



「A様はなに食べるんです？」

『うーん、どうしようかしらね』



私は足元から顔を上げた


一瞬、催眠術にでもかかったかのように、景色が変わって見えた


あれって…


私の目の前、遙か遠くだけど、見覚えのある顔



あれは絶対に教祖



しかも隣には超美人な女の人



二人はお互いに顔を見合わせて微笑みあっている



うわっ、目が合う目が合う！！！！



教祖がこっちを向く…！！！！



『ヒナ！全部食べよ！買ってあげるから！』

「ッA様、、！？」




なるべく外ではおてんばを出さないように頑張ってたのに…！


もういい知らない！


私はヒナの手を引っ張って急いで甘味処に入る


刀を持つ時以外はあまり焦ったりしないから、ヒナはすこぶる驚いている



「い、いらっしゃい、Aちゃん…？」



甘味処に入ると、なにがあったのか全く理解できていない様子の店主が大丈夫かと声をかけてくる



『大丈夫よ…ちょっと色々あって』

「あらそう、、？」

『ごめんねおばさん、お茶もらえるかしら』



一目散に走ったから息切れがする


同時に心臓がドキドキする




「大丈夫ですか？」

『え、えぇ』



出されたお茶を一気に飲み干して、心臓の音は聞こえないふりをした

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