単純 ページ4
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休み時間に入ると、Aの周りにはクラスメイトによって人集りが出来ていた。みんな、転校生という珍しいものには目がないのだ。ドンヒョクは巻き込まれるのを避けるために、人集りの少ない窓際へと移った。
どこから来たの？好きな食べ物は？趣味はなに？誕生日はいつ？ひとつひとつにちゃんと答えるA。礼儀正しい、優しい子なんだなぁと、ドンヒョクはひっそりそう思った。
「ドンヒョクはいいよなぁ、あんな可愛い子と席隣だなんてさ。俺も席替えの時、その席にすれば良かったよ」
「俺は日頃の行いがいいからな。お前も俺のこと見習うべき」
ロンジュンが羨ましそうに言えば、日頃の行いがいいから。なんて言ってしまうドンヒョクは相当調子がいいらしい。彼はこの待ち望んでいた気持ちがようやく訪れたことで気分が良くなっている。
そんな有頂点なドンヒョクを見て、ロンジュンはほんと単純なヤツ、と少しの笑みをこぼしながら思った。
朝のHRが終わり一限開始のチャイムが鳴り響けば、あれだけAに群がっていたというのに潮が引いたみたいにみんなあっさり席へと戻っていった。
一時間目は物理。ドンヒョクはこの授業が好きではない。だって、数学じゃないのに計算問題だってあるし、国語じゃないのに文章がひたすら長いものだってあるし、理解するのがとても難しいし、なによりつまらない。先生の言葉は韓国語には聞こえなくて、全部英語のように聞こえるし、子守唄のようにさえも聞こえる。
ドンヒョクはいつもこの授業では先生の"子守唄"を聴きながら寝ることにしていた。ノートはいつもテスト前にジェノに借りて写すのが当たり前になっている。
なので、今日もドンヒョクはいつものように腕で枕を作りそのまま眠ろうと思った。
「ド、ドンヒョクくん、起きてる？」
今日は、隣がいる。いつもはいない隣。
そんな隣からドンヒョクを呼ぶ声が聞こえたのだから、ドンヒョクは瞑ったままの瞼を開いて、まだ寝そべってはいるものの顔を声のする方に向けた。
「なに、どうしたの」
「えーと、あのさ、わたし教科書忘れちゃって、、。国語とか数学なら持ってきたんだけど、物理あるとは知らなくて、だから良かったら一緒に見せて欲しいんだけど、いいかな？」
申し訳なさそうにドンヒョクを頼るA。
今日のドンヒョクは彼女のおかげで気分がいい。
それに男はいつだって頼られたい生き物だ。
「いいよ、見せてあげる」
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作者名：しゃしゃねこ | 作成日時：2021年4月7日 23時
