__恋する (ページ36)

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子犬のような顔でこちらを見る。
かわいいエフェクトがかかってるみたいに、
ウルウルした瞳に思わずきゅんとした。

「いいですよ、早く終わらせて
　早く帰りましょ？」

と「…うん。
　んじゃちょっとこっちきて」

とぅーし君は立ち上がると、今まで自分が座っていた
ソファを指差して私を呼ぶ。

気持ち小走りでソファに向うと、
とぅーし君はスマホをポケットにしまい
髪をくしゃくしゃと崩しはじめた。

座ると、ふわふわのソファに身体が沈んでいく。

「座りました！」

次はなにを？って顔でとぅーし君を見上げると、
足元に座り込み、顎を私の膝にぽふっと乗せた。

「、…っえ！？」

と「はぁ…………」

物憂げな表情をしたかと思うと、
顎を傾けて太ももに頬をすりすりさせる。

髪が当たってちょっとこしょばい。

身動きが取れずに、手だけが宙に浮く。
どういう状況なのこれ……

「えっと、……」

と「ごめん、ちょっとだけ…」

「…………」

上目遣いでこっちを見てそう言うと、
気持ちよさそうに瞼を閉じる。

…本当に犬みたいだ。

スゥスゥと今にも寝出しそうな呼吸音、
息をするたびに膨らむ背中、
そこだけ止まってるかのように動かない睫毛。

…この感情はなんなんだろう…。

「何かあったんですか…」

と「うぅん、なんか疲れちゃって…色々…」

「そうですか、」

はぁ…と大きめのため息を吐く彼に
思わず手が伸びる。

サラサラの髪を撫でると、ぴくりと肩が動き
また上目遣いで私を見ると目尻を下げて微笑む。

と「だからさくらちゃんでチャージしてるの」

「え…さっきから？」

と「うん…さくらちゃんの生活音聞くだけで
　なんか癒される…

　あと息遣いとか咳払いとか
　存在がもう………癒し……
　もっと撫でて」

さっきからただ居たのは、そういう意味だったのね。

正直半分も理解できないけど、
なんとなく嬉しい。

再び閉じた瞼はほんのり笑ってるように見える。
たしかに元気出てきてるかも…？

「いつも頑張ってますもんね」

と「えらい？」

「えらい！」

と「ふは、…やべ、元気出た。笑」

「良かったです。」

「でも、もうちょっとこのまま…」

ふくらはぎに腕を絡ませて、更に密着させると、
太ももの間に顔を埋める。

私も、もうちょっとこのままがいい、かも。

「元気のない彼(水)」 end