検索窓
今日:27 hit、昨日:3 hit、合計:14,646 hit

__02 ページ27

_


小さく声をかけても反応はなく、
僅かな寝息だけが聞こえてくる。


林檎を食べてしまったアダムとイヴは
こんな気持ちだったのだろうか。


自然と伸びる手をつい俯瞰で見てしまっている。


「起きないと触っちゃいますよ……」


あつきさんのもこもこの髪に優しく触れると
不思議な感触。くすぐったい。

自分の呼吸音さえ五月蝿くて、
どうかどうかあつきさんが目を覚ましませんように、
って祈りながら、震える手を移動させる。


おそるおそる頬に触れると、
あつきさんがビクッと反応する。



あ「………、んぁ? あ、やべ寝ちゃってた?」

「は、はい…!皆さんもう帰られました!」

あ「そか…………俺も帰らなきゃー
  ごめんねー遅くまで」

「…いえ、」


寝起きとは思えないほどテキパキと用意すると、
すぐに扉の前に立ちスニーカーを履いている。



「おつかれさまでした」

あ「おつかれさまでーーす。」


バレてないだろうか、とバクバクと鳴る胸をおさえて
小さくお辞儀をするとあつきさんがぴたりと立ち止まる。


あ「……さっきの、深い意味ある…?」

一瞬痛いくらいに心臓が跳ねて、
冷や汗が一気に溢れ出る。

少しだけ開いたドアがカチャリと閉まる音がした。



「…っえ、と…………ない、です…」

あ「……ふぅん、」


あつきさんは上から下まで舐めるように私を見て、
怪しい、という顔をする。

やっぱりバレてた…どこから?
触ったところだけ?!

目の前がぐらぐらするほどに混乱していると、
あつきさんがスニーカーを脱いで
こっちにズンズンと歩いてくる。

近付くほどに息が苦しい。

私の目の前に立つと、右の口角だけ上げて
髪をわしゃわしゃと崩される。


「わっ!えっ!!」

あ「これでおあいこ!」


と悪戯に笑うと、満足そうな顔で再びスニーカーを履き
颯爽と帰っていった。


その交わし方、ズルいです……

やっぱり敵わないと思うのに、
どんな形でもそばにいたいって気持ちだけは
許してください。




「綺麗な人(赤)」 end

▶︎二つ結び(橙)__01→←▶︎綺麗な人(赤)__01



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
31人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まるさ | 作成日時:2022年12月12日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。