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教えてもらった住所をマップに入れて辿ると、
実家から電車で少し離れたところに着いた。
駅から少し離れたアパート。
103号室には " 平野 " と書かれてあった。
深呼吸をして、インターホンを鳴らした。
しかし応答はなく虚しく消えた。
時計を見ればまだ夕日が出る前の時間で
普通に考えたら平日のこんな時間、まだ仕事中だと気付いた。
連絡先は持ってないし、いつ帰ってくるかも分からない。
紫耀が帰ってくるまで玄関の前にしゃがんで、待つことにした。
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それから何時間が経ったのか、外は真っ暗になって。
コツコツと歩いてくる足音と、それに合わせてガサガサ音を立てるビニール袋の音が聞こえてきた。
一通りも少なくて、なんだか怖くなって顔を伏せる。
『…あの、』
聞き慣れたハスキーな声。
顔を上げるとわたしの目線に合わせて同じようにしゃがんでいる紫耀と目が合った。
途端に紫耀の目がまんまるに開いて、
『え、どうして、』
「…待ってた。」
『え?いつから?なんでここ、』
「…わかんない。」
『わかんないって…
取り敢えず、家入ろう。』
紫耀は立ち上がると、横にあった大きな荷物達に気付いて
『…どうしたの、これ。』
「…ちょっと、」
『…入ろっか。』
何かを察したのか、そのまま荷物を持ってわたしを部屋に入れてくれた。
『適当に座ってて。』
「うん。」
そう言うと紫耀は違う部屋に入ってしまい、
わたしはどこに座ったらいいか分からないまま
その場で部屋を見渡した。
暫くするとスーツから部屋着に着替えた紫耀が戻ってきて、
うろうろと座れないわたしを見て笑った。
『ソファー座ってて。』
「あ、うん。」
紫耀はお茶を入れてくれて、同じようにソファーに座った。
そして少し怒ったような顔をして、
『いつから待ってたの?』
「…夕方くらい。」
『…連絡してよ、』
「連絡先、消しちゃったから。」
『はぁ、飲み会とか残業で帰れなかったらどうするつもりだったの…』
「…ずっと待ってるよ。帰ってくるまで。」
『馬鹿。よかったほんと、何もなくて。』
結局こうやって会えたから、それでいいの。
「…紫耀に話したいことがあって、来たの。」
私の気持ち、今度はちゃんと受け止めてほしい。
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れお(プロフ) - 完結おめでとうございます!!主人公ちゃんの恋が実ってよかったです!!特に夏祭りのシーンが1番好きでした!! (2020年7月17日 23時) (レス) id: d4f299bb85 (このIDを非表示/違反報告)
かいとん - おめでとうございます!とっても読むの楽しかったです! (2020年7月17日 23時) (レス) id: fb912074b2 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 完結おめでとうございます!毎回キュンキュンさせてもらっていました…!主人公ちゃんが離れてからの紫耀くんサイドとか書くつもりはないですか…?別れ方とか経緯とか知りたいです!あと良ければアナザーストーリーも読んでみたいです!! (2020年7月17日 20時) (レス) id: 22f4b229dc (このIDを非表示/違反報告)
かいとん - んあー……続きが気になりますッ! (2020年7月5日 0時) (レス) id: fb912074b2 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 紫耀くんとのハッピーエンドが見たいです!更新楽しみにしています! (2020年6月26日 9時) (レス) id: 7f99bf756c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コビト | 作成日時:2020年6月14日 22時