深澤センパイの思惑通り。［紫］ (ページ50)

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▽あなたside

お休みを貰って、久しぶりに、と言っても3日振りの出勤。

会社のエントランスに着くと、阿部さんと深澤さんの後ろ姿を見つけた。

何も言わないで通り越すのはな、そう思って普通に「おはようございます」と挨拶しておいた。

そしたら、振り返った2人は、優しい笑顔で「おはよう」と返してくれた。

『お休みの間、ご迷惑かけました、ありがとうございました。』

阿「いーのいーの。」

深「結構しんどそうだったし、無理すんのダメだからね。康二も超心配してた」

『すいません····、深澤さんにいたっては泊まって頂いて、』

自分で言っといてだけど、うっすら思い出してしまって、恥ずかしくなってしまう。

深「顔、赤いけど熱ある？」

そっとおでこに触れた深澤さん。触れられたおでこだけがどんどん熱帯びてくような気がした。

阿「はい、早くしなきゃ。遅れちゃうよ。」

『あ、はい！』

深澤さんとはお別れして、阿部さんと並んで出勤。

阿「ふっか、Aちゃん家泊まったんだね」

『深澤さんが心配だからって。』

阿「優しいもんね。」

『とっても優しいです。』

優しすぎるから苦しいです、だなんて阿部さんには言えない。

本当は私だけに優しくして欲しい。

私だけ特別扱いして欲しい。

私だけに「可愛いね」って言って欲しい。

人ってどうしてこうも欲深くなってしまうものか。

1つ叶えば、次はこれ、その次、その次、を求めてしまう。

私と深澤さんがどうにかなるなんてありもしないのに。