【鬼滅の刃】喩え貴方を喰ろうとも 弐

伍拾捌.正体 ページ13

風柱が地に足を付けた瞬間、何かが目にも留まらぬ速さで飛んできた。


それを風柱は素早く刀を引き抜き防ぐ。


音もなくそれは、地面に落ちた。









「天鼠(てんそ)...？」






天鼠だ。


地面に真っ二つに割れて死んでいるのは小さな掌サイズの天鼠だった。



これを、あの一瞬でこんな綺麗に真っ二つに斬ったのか？


私を未だに担いだままでいる風柱に目をやる。



とてつもなく恐ろしいと改めて実感した。





「くるぞ」





その言葉と共に、土煙が巻かれた。




「あぁ...あああ!!!」



甲高い気味の悪い叫び声がその場に響く。


ビリビリとした空気が嫌に張り付いた。




姿を表したのは、私より一回り大きい体で、
顔には口以外覆い隠された黒いマスク、腕には大きい黒い羽根を生やした女だった。


角と牙も確認出来る。





「鬼狩りぃい...!!何故ここに!!」





その周りを飛び回る大軍の天鼠。


あれは、食べられるのでしょうか？

本体でなくても本体を取り巻くものなら食べたら力になるのでは？



あぁ...腹が空いた。




飢餓状態になるとどれだけ不味い鬼でも美味しそうに見えてしまう。






「おい しっかりしろォ」




しまった、空腹のせいで風柱のことを忘れていた。


それよりも目の前の敵だ。



歯を強く噛み締め、見えない視線を私たちに向けている天鼠女。





「鬼狩りは潰す!!殺す!!咬み殺す!!!」





その甲高い声と共に、大量の天鼠が襲いかかってくる。


風柱から、息を吸う音が聞こえた。

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