甘い夢に溺れる。 (ページ5)

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びたーページ5

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　何時かに聞いた歌を思い出す。……確か、幼馴染みの彼がカラオケで歌っていたものだったか。嘘やら本当やら、ペテンやら……彼らしい単語が並んでいた歌詞だったような気がする。否、もうあまり覚えてすらいないのだけれど。

嘘を駆使して、媚びない程度に幼馴染みを利用してまで近付いて。それでもまだ、貴方は気が付かない。気付かなくていいよ、こんなに汚くて苦い感情には。彼に吐き出してみてもどうせ、何も変わらないのだし。
　幼馴染みからの好意には気付いていた。彼もきっと、それをわかっていて利用されていた。これだけを聞いていると、詐欺師というよりは、道化師に近いようにも感じる。道化師ならば、クラウンなのか、ピエロなのか。それはまぁ、もう、どうでもいいだろう。唯々虚しくなるだけなのだ。……ごめんね、丸井くん。

「 ……いままで、ありがとうございました」

　こんな時期に転校は珍しいと思うのだけれど、両親の転勤が理由なのでは仕方が無い、自分に言い聞かせる。あの特徴的な深緋色の髪が、紫苑色の瞳が、目に映るだけで泣いてしまいたくなるから、彼の方は見ないようにした。

「 ………さよなら、わたしの好きな人」

　きっと聞こえていないのだろうし、聞こえていたとしても誰のことかも分からないのだろうなぁ。

　もし、もしも。……次に会うときには、どうかこの想いが消えていますように。

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