渡辺くんは彼女の声が聞きたい。〈青〉

▽17.聞こえないことをいい事に ページ17

▽




職場の先輩に、悪口を言われた。


···· 気がする。


人を見下すような、憐れむような、馬鹿にしたような。


そんな目で私を見ながら何かを口にする。



私が聞こえないからって逆手にとって逆に都合ええわ、的な？



別に聞こえないから嫌な気にも一切なんないし、腹立つことも無い。


勝手に言ってれば、って感じだった。



けど、見えるようにされれば話は別。



私さ、なんかしたかな。



耳も聞こえなくなるし、職場では先輩から罵倒されて。


嫌でも悲劇のヒロインみたいな気持ちになるよ。



なんで私ばっかりこんな。




今日は少し、いや、かなりブルーな気持ちで帰宅することに。


その気持ちが空にうつったのか空からは雨が降り注いでいた。


あー、傘ないや。


駅までの道を歩いていれば、前から見覚えのある人が歩いてきた。



···· 渡辺くんだ、



私を見つけた瞬間、手を引いて、着ていた上着を私に掛けてくれた。


渡「なにしてんの、」


声は聞こえなかったけど、確かにそう言った気がした。



『··· ご、めん、』

渡「Aちゃん、(とりあえず俺ん家でいい？)」



ちゃんと声にしたくて、久しぶりに声を出した。



びしょ濡れだった私を心配してくれた渡辺くんは、近くだった渡辺くんのお家に連れて帰ってきてくれた。

▽18.渡辺くんのお家→←□16.君のため

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