君がくれたもの 2

70.くろ ページ22

まだ全然ガキだった私たちを拾ってくれた人。

今も大概ふざけてるけど私たちの意識を変えてくれた人。

感謝してもし切れないくらいお世話になっている。

『今日は来てくれてありがとうございました』

マホト「いや、全然。楽しかった」

『えっと…そらからどこまで聞きました？』

マホト「…抜けるとしか」

『東京に引っ越すことになって、動画に全く出れないからやめるっていう感じです』

マホト「…それだけ？」

『…え？』

マホト「本当にそれだけかって聞いてんの」

この人はえいちゃん以上に心が見えるのかもしれない。

実はもう１つだけ誰にも言ってない理由がある。

『…母が再婚したんですけど、新しい父親があまりこのYouTuberに良い印象を持っていなくて…』

マホト「それでやめるんだ？…お前変わったな」

『…私は家族が嫌いです。顔すら見たくない。
でも今の私は誰かに育てて貰わなくちゃ生きていけない』

マホト「好きなことやめてまでそこまで媚び売って生きることはお前に繋がるの？」

媚びを売っている、その言葉が引っかかった。

『…別に、こ、びなんて売ってない』

涙が止まらなかった。

自分でもなんの涙がわからない。

まほっちゃんは私が泣いてることに気が付いて抱きしめてくれた。

マホト「ごめん、言い過ぎた」

甘い香水の香りが鼻をかすめる。

マホト「俺はお前に抜けて欲しくなかった。でも…やっぱり今のAには家族は必要だね」

『…今までお世話になりました』

マホト「なーに言ってんの」

まほっちゃんと目があった。

マホト「仲間屋東京にあるんだからいつでもおいで」

…私の周りには優しい人ばっかりだ。

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