追憶のスケートリンク ページ38
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「グレートル、おいで。」
明朝___濃い霧の立ち込める静かな森の奥にポツリと作られたスケートリンクの傍に佇み、微笑むレオポルトの瞳には、何枚ものコートを重ねてまるっとしたフォルムになったマルガリータの姿があった。マフラーの間から覗く、マルガリータの真っ赤な鼻先と頬を愛らしく思いながら、レオポルトはマルガリータの華奢な手を取った。
久方ぶりに直接対面したレオポルトに、急に北欧の別荘へと連れてこられ、驚いていたマルガリータだったが、そんなことはすっかり忘れて、目の前の光景に夢中になっている。
「凄いわ、お兄様。これ、貴方が作ったの?
だからアイススケート靴を持ってきたのね…」
きらきらと少女のように瞳を輝かせながら、マルガリータは足取りを止め、スケートリンクをぼうっと眺める。18歳になったマルガリータの、幼気な素振りにレオポルトは目を細める。
レオポルトもマルガリータと共に足取りを止め、改めて森の中に作られたスケートリンクを眺める。
雪の降り積もった大地と樅の木、深く立ち込める霧に、まだ夜の色が滲む美しい空。
改めて見ると、その素朴な美しさに、レオポルトとマルガリータは同時に溜息をついた。
「グレートルがいつだったか、『スケートがしたい』と言っていたのを思い出して作らせてみたんだ。」
「まあ…お兄様が覚えていてくれたなんて…
嬉しいわ!今年貰ったクリスマスプレゼントの中で一番よ!!」
元々赤い頬を更に赤く染めて、幼子のようにはしゃぐマルガリータを、レオポルトは微笑みをたたえて見守っている。
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