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「急にどうしたの?」
「…もう少し貴方と一緒にいたいから寄り道したの。」
「…そう。」
カフェに入ると暖房の暖かい空気に包まれる。
貞児とソフィアは、暖かみのあるふんわりとしたソファに腰掛け、注文を済ませる。
貞児は、店員が去ったのを見計らったかのように口を開いた。
「…美術館に一緒に行けるような友達ができて凄く嬉しいなって思ってたの。」
「今日は貴方の言動が随分と急なことが多いわね。」
「そういう気分なの。
……ここから先は私が一人で喋ることだから気にしないでね。
私の趣味は同じ趣味の人を簡単に見つけられるようなものではないじゃない?だから、もう同じ趣味の人は見つけられないからって諦めて、美術館巡りもバードウォッチングも一人で行って当たり前だと思っていたの。
そしたら、ソフィア…さんと出会って、一緒に美術館に行くお友達ができた。
さっきの美術館には去年の別の展示の時に行ったことがあったから、その時と比べて凄く楽しいなって。」
「…私も、今回の展示物は一度見に行ったことがあるけれど、貴方の視点から見た展示物に対する解釈がすごく素敵だったわ。展示物に対する考えを共有できるのは、良いことね。
……それと、やっとファーストネームだけで呼んでくれたわね。」
ソフィアは嬉しそうに僅かに口角を上げて貞児に向き直った。
貞児は頬を少し赤らめながら「駄目だったかしら」と尻すぼみになりながら呟く。
「貴方とはよくお話するから…使用頻度が高くて、長い名前だと呼びにくいと思ってファーストネームだけで呼んでみようと思ったの。嫌だったらごめんなさい」
「…構わないわよ。寧ろ嬉しい、有難う。」
ソフィアの返答を聞いて、貞児は満面に喜色を浮かべて「ほんとの友達みたい」と小さく呟いた。
ソフィアは「本当の友達でしょう?」と小さく微笑んだ。
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