こたつと、お鍋と ページ27
「いらっしゃい、マルグリット。」
インターホンが鳴るのを待っていたかのようにイザベラは扉を開ける。内心マルグリットが来るのをとても楽しみにしていたが、その花の顔に浮かぶ表情はいつも通りの無表情だ。
「お邪魔しま〜す!!」
マフラーから覗くマルグリットの頬と鼻は真っ赤だ。
マルグリットは、大きなスーパーのレジ袋片手にニッコリと無邪気な笑みを浮かべて、小さく一礼してから、イザベラに案内されて家の中へと入る。
「今日はお母さん、いないんだね。」
「えぇ、一歩先にフランスへ帰ってるの。こたつ、出したから是非座って。」
イザベラはマルグリットから預かったスーパーのレジ袋から野菜を取り出しながら答える。
マルグリットは「それじゃあ遠慮なく」と嬉しそうに炬燵へ入り、「やっぱ良いねぇ〜」と表情を蕩けさせる。
イザベラはそんなマルグリットを微笑ましく思いつつ、台所から鍋を持ってきて、予め置いていたカセットコンロへ置く。
「さあ、温めて食べましょうか。」
「うん!!」
二人は顔を見合わせ、マルグリットがカセットコンロへ点火する。
かちっ、と音がして火が点くと、二人は同時に表情を綻ばせる。
「…〜!!やってみたかったんだよね、お鍋!!」
「ふふ、出来上がるのが楽しみね。」
珍しく笑顔のイザベラに、マルグリットは更に微笑んだ。
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