外つ国に生まれた少年は、日の本のヒーローを愛している。 (ページ50)

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目覚めた欠片の幸せ達ページ50

　
　
　
カーテンの隙間から漏れた光で目が覚める。
時計を見てみれば、アラームが鳴る丁度10分前。
身体を起こして少しの気持ち悪さを感じる口を漱いで、顔を洗い、髪の毛を整える。

「朝ごはん、朝ごはん〜」

冷蔵庫の中から卵とベーコン。
トースターには食パンを2枚。
お湯を沸かして棚から紅茶の缶を出す。
ジュワジュワとフライパンの中で食材が焼ける音、ジーっとパンを焼く音、ボワボワとヤカンの下で動く炎の音。
そして、外から届く動物と車の音と、人の声。

フライパンから出来上がったベーコンエッグを皿に移し、焼き上がった食パンも皿に乗せる。ボコボコと沸いたお湯をポットに入れて、茶葉が揺れるのを見ながら少し待つ。
テーブルの上に皿を並べて、ほんの一瞬届いている皆からのメッセージに目を通して、何個か返信すれば紅茶が良い具合に色付いている。

「……いただきます」

手を合わせて、いただきます。
日本に来て、彼から教えて貰った食事のやり方。
サクリとした食感のパン、トロリとした最高の出来である卵。素晴らしい香りを漂わせる紅茶。
食材を口に入れる度に幸せな気持ちが湧いてくる。

カチャリカチャリと“ごちそうさま”をしてから怠けずに食器を洗う。
相変わらず外からは明るい光が部屋の中に入り込んで、人の声が聞こえて、営みの音がして、動物が鳴いている。
少し皺ができた指でカップを持って、緩くなった紅茶を口にしながらレースカーテンの側に座る。
幸せなんてものは、これくらいで良い。
口に入れた物が美味しくて、アラームより早く目が覚める。
これくらいの何の変哲もない小さな欠片を集めた先に、大きなナニカがあるのだと思う。

「今日も、良い日だね」