聖歌隊の様な声で迷子になる ページ22
「Sorry.」
肩を叩かれて、振り向く。
そこには俺が言えた事では無いけれど、外国からの旅行者です！と言わんばかりのヨーロッパでよく見る顔付きの人が立っていた。その人は暗くなった画面の携帯を見せながら「バッテリー、無い、ました。まいこ、てす」と懐かしい気持ちになるたどたどしい日本語で自分の事を話してくれる。
「Where would you like to go?」
もし、英語が分からない人だったら彼の日本語レベルを考えると俺もお手上げになってしまうが、杞憂だった様で分かり易く顔を晴らせて、漸く俺の顔を見れたのか安心した様に息を吐いた。
「I want to go to the station.I veered off with a friend and just sent him a message to meet me at the station, and then my battery died.」
「I see.Ah〜……To get to the station, keep walking straight down the road, turn right at the traffic lights and you'll see it.OK?」
「Understood. Thank you, that's very helpful.」
「Good. Okay, then Have a good one.」
「Same to you.」
彼と別れて、先程よりもずっと真っ直ぐになった背中を見送って自分の用事へと戻る。
昔は母国語以外なら日本語だけを学べば良いと思っていたけれど、こんな出来事に触れるなら英語を学んでいて良かったと心の底から思う。
流石セカイキョウツウゴと呼ばれるだけはあるなと思いつつ、何故だか無性に自分の言葉を恋しく感じる。
この場所で俺の母国語を聞く機会なんて殆ど無い。
だからこそ、ずっとずっと大切にしたい。
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作者名：紗世 | 作成日時：2024年2月19日 20時
