6.虚実を ページ6
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「君は身近な人物が、君のことを好いていることをいい加減に自覚した方がいい」
Aはヒュッと息の詰まるような思いがした。不意をつかれた。嗚呼、恐ろしい。
「……ちがうよ」
「あの人は、わたしのことなんか好きじゃない」。そう紡いだら全てが壊れてしまう心地がして。もう演技なんて到底、できなくなりそうで。つなぎ止めてきた全てが、手元から零れ落ちて来るような気がして。
本当はわたし、外に本当の自分を曝け出すのが、怖いだけ。曝け出したら、ケーサツに捕まっちゃうから。
背後から忍び寄る音に、太宰は耳を澄ませた。うわ、と思わず端正な顔を顰めてしまうのも仕方がない。
「相変わらずの悪巧みかァ?」
「その声は」
「良いねこりゃあ、最高の眺めだ。百億の名画にも勝るぜ。えぇ?太宰」
「最悪。うわ、最悪ぅ」
「台詞がくさいよオニーチャン」
「うるせ」
「……本当だ。全然変わらないね、中也」
「アァ!? どういう意味だ誰から聞いた!……手前だな?」
「客観的な事実を云ったまでだけど」
「前から思ってたのだけれど、その恥ずかしい帽子はどこで買うの?」
「云ってろよ
「うん」
「少しは否定する気配くらい見せろよ」
「だが今は手前は哀しき虜囚。泣けるな、太宰?いや……それを通り越してもはや怪しいぜ?でっちの芥川は騙せても、俺は騙せねェ。何しろ俺は手前の元相棒、だからなァ?何するつもりだ」
「何って見たままだよ。捕まって処刑待ち」
久々の相棒双黒の会話には、入る余地もない。
相変わらずだなあ、とか太宰くんだって変わらないなあ、とか欠伸を噛み殺しながら思うところは沢山あるものの、Aは笑みを浮かべたまま棒立ちになっている。
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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時