どうやらわたしは思い通りには生きられないみたいで【文スト】

37.ただ可憐で自由な野原の少女 ページ37

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　話しながら段々と彼の目が大きく見開かれているのを覚えた。絶望。それに近い。
　彼は途中で話を区切る。

「この話はまたいつか」

　あんなに子どものように笑っていた彼が、どうしてそんな顔を浮かべるのか分からなかった。
　わたしもおずおずと話を進めた。


「......あの、コーリャ」
「あなたはわたしを美しいと言うけれど、全然そんなことないの。有り得ないくらい性格は悪いし、最低だし、よく人を利用するし、演技が上手いのも人形みたいだって嫌われちゃう」

「どうしてそんな話を？」


　彼が少し首を傾げる。分からない、どうして？
　やはり無邪気な子どもみたいだった。


「......なんだかいつも誰かを騙しているみたいで、息苦しかったから。初対面のあなたには、自分から打ち明けて、本当のわたしを知って欲しいと思った」


　みんなわたしを美しいという。それはただの外見の表象記号に過ぎないけれど、それにも関わらず大勢の人がわたしの人柄も何もかもを褒めた。太宰くんだってそうだった。
　違う、騙されてる。わたしは最低なヤツで、これからもきっとそうだ。一人で冷たいご飯を食べて、深く眠って、人を騙して、ひとりでそのまま生きていく。数少ない人間にしか本当の自分を打ち明けられないまま、人形みたいに、このまま。

　そんなわたしの思いを打ち破るように彼は語調を強めて言った。


「君を人形みたいだと言ったやつを、僕は心底理解が出来ない。人間という生物種の最高位に位置づけても良いくらいだろう」

　目を大きく見開いた。
　私(わたし)が、人形みたいじゃない？ ちゃんと人間なの？

「君は道化師は好きかい？」

　唐突な質問に、思わず首を傾げたがそのまま答える。

「......好きじゃない。自分の感情を抑え込むのは、馬鹿らしい。まるで自分を見ているようで嫌になる」


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