どうやらわたしは思い通りには生きられないみたいで【文スト】

32.白髪オッドアイ露西亜人男性 ページ32

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　演劇を好きな感覚を取り戻そうと、有名歌劇団のミュージカルを大金を積んで見に行くことにした。大金を積んでも見に行く価値があると思えるくらい素晴らしい舞台なのだと口コミで見た。
　本当は数ヶ月前に予約をしないと入れないような舞台なのだが、Aのせいで不安定になった演技改善のため、一昨日SNSで讓渡枠を必死に探してやっとこさ手に入れたものだ。

　意外と良い席を取れたな、とセンブロ前から7列目に腰掛ける。このくらいなら上手も下手のところもバランスよく見えるし、双眼鏡を使う必要もなさそうだ。そう考えていると、不意に隣から声がかかった。白髪で、珍しいオッドアイが特徴的な若い男性だ。コンタクトだろうか。


「おひとりで来られたんですか？」
「はい？ えぇ、一人で」


　怪訝そうに眉を顰めるわたしに、彼はああっと素っ頓狂な声を出した。

「ああいえこれは申し訳ない！いやあ異国な地なもので、知り合いがいないまま観劇するのが恐ろしかったのです！」
「はあ、そうなんですね。どちらからいらっしゃったんですか？」
「大国、露西亜さ。そっちは？」

　質問の意図が分からず、少し首を傾げて、やっと意味を理解した。

「......ああ、日本在住です。仏蘭西と日本のハーフなんですけどね」

　ハーフ顔だからだろう。露西亜人にしては日本語が上手すぎるが、留学生か何かだろうか。流石外国人、やけに整った顔だ。

「なるほど、通りでアジアンビューティーの中にヨーロッパ系の美しさが混在している訳だ」
「ありがとうございます」
「今日の舞台は楽しみだ！こんな美女の横で素晴らしい歌劇が見れるとは！」
「そ、そんなに......」

　お兄さんだって十分かっこいいですよ、と笑みを浮かべるとハハハーハ！それは光栄！とウインクをかまされた。随分と個性の強いイケメンだね。


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