31.自分の中に自分がもう1人いる ページ31
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何故特務課が未だにわたしを捕まえに来ないのかは甚だ疑問だ。疑問ではあるが、触れられない。触れてしまえば最後、シンプルに特一級危険異能力者として特務課に拘束されてしまう可能性の方が高い。いや、もしかするとわたしの異能力は特一級どころの話では無いかもしれない。最悪死罪だ。ムルソーなんかで捕縛されても不思議じゃない。逃げろというのも無茶な話で、マスコミ1人にでもわたしの存在が明らかになれば拘束はやむを得ないのだ。
わたしはポートマフィアにいられるのだろうか。マスコミの影響力の強さは圧巻で、そのことが全国に広まれば、流石のマフィアにも迷惑をかけてしまうことになるだろう。
そうなれば、わたしはもう誰にも会えない。
ひとり死ぬしかない。
ポールにも、お兄ちゃんにも、太宰くんにも、立原くんにも、もう誰にも。
「一つ忠告しておこう。一般論では、その涙こそが正しい。」
喜怒哀楽の「哀」。
わたしは気が付かぬ間にぽろぽろと涙を溢していた。
首領は硬質な声で、真摯な眼差しで私を見つめる。苦しくて切ない。
それよりもわたしは悔しかった。
今でさえ感情を制御出来ない苛立ちだ。
わたしから演技を取り払ったら、ほかに何が残るのか?
わたしは今後、もうみんなに会えなくなるのかもしれない。
今の自分かのように、今にも雨の降ってきそうなどんよりとした暗い雲の下で、「やぁ」と背面から声をかけられた。
「太宰くん?」
「起きたのだね、また数年眠るのかと思ったよ」
「目覚めたら地下で、冷たくて起きちゃったよ」
太宰くんが「ねぇ」とわたしの肩を掴んだ。鳶色の瞳と絡み合って、アイスブルーの瞳がぐらりと揺れた。ぽつりぽつりと雨が降ってくるのを、髪の毛に小さな衝撃が走ったので感じ取った。彼が何か話を続けようとしているのが分かったが、「わたし忙しいから」とその場から全力で走り去った。今、多分苦しくて演技ができない。この前も下手くそだって言われちゃったのに、好きじゃないのがバレちゃう。その異能力が羨ましくて、ゲロ吐きそう。多分なにか言葉を発そうとしても、今は金魚のようにぱくぱくと口を動かすことしかできないと思うのだ。
雨が私を濡らした。止まらない涙を拭わない理由には、ちょうど良かった。周囲が傘を差した。
多分今は、わたしの顔を誰も見ていない。
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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時