25.人生における転落 ページ25
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忽ち号外になり、怪事件として扱われた。
大好きな演劇が二度と出来ないのだと絶望して、しかし涙は出てこなかった。
私はケーサツに捕まるのが嫌で、擂鉢街で震えて身を隠してちぢこまった。
もちろん全く見つからないのは不可能で、どんなに演技をして捕まってもガラの悪い数名に宮坂であることがバレてしまった。しかし、その都度、私の黄色い亜空間が私を助けてくれた。どいつもこいつも直ぐに殺せてしまう。今思えば、それが私を助けてくれたのか追い詰めたのかはどっちつかずの話だ。
そんなとき、煉瓦色の髪をした少年に出くわした。彼は目を大きく見開き、『宮坂蕉雨』と単語を発する。今度もあの亜空間が助けてくれるのかと思ったが、彼は彼に飛び込んできた亜空間を全部退けるのである。私は焦った。今度こそケーサツに捕まる。ただでさえ世間に嫌われてるのに、更に嫌われちゃうし、二度と外に出れない!
『何も言わねェからっ、一緒に着いてこいッ!』
羊という組織に拾われて、髪を黒から白に染めた。
演劇の道は、とうに諦めた。そう、私は諦めたはずで。
身寄りがいないことを話すと、中也は戸籍の誤魔化しのために妹になれと提案してきた。
お兄ちゃん、という言葉がやけに口馴染みが良かったのは、元来彼と縁があったからなのだろうか。
「俺ァできる範囲でって言ったンだ、起きろ、なァ」
白い陶器のような頬をつついても返事はない。もしかするとまた数年起きないのかと思うと今からゾッとする。
ヨコハマの被害はコイツのお陰で最低限に抑えられた。部下の死亡数も予想人数より遥かに少ない。
こんな状況下で不謹慎だがやはり可愛らしい顔をしていると思う。首領はAの素顔を長年所望しているが、俺の方こそ見たことがない。いや、先日の太宰の煽りによって齎された表情。あれの、たった一度きり。だからこそ驚いた。いつものじゃれ合いのどこまでが本心か分からねぇ。
当たり前だ、兄妹を名乗ってはいるものの、俺たちが出会ったのはあの事件の後だ。
仕方がない、地下に連れてってやるか、と深く溜息を吐いた。
恐らく、コイツが唯一信頼出来る相手は、地下にしかいない。
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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時