どうやらわたしは思い通りには生きられないみたいで【文スト】

23.私は優秀な子役 ページ23

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「ねえ見て見て、宮坂蕉雨！」
「ホントだ、バラエティにも引っ張りだこだね。CMにもドラマにもずっと出てるし」
「可愛いし演技も上手くて映像映えするからね。元は舞台にいたみたいだよ」
「へぇ、そうなんだ」

　家電製品店のテレビを見ながらきゃっきゃっと戯れるJKを横目に、いそいそとコンビニへと入っていった。

　そう、私こそがその宮坂蕉雨だ！

　横には会社員のような灰色のスーツを着たおじさんが、レジでお気に入りのコンビニスイーツを差し出す私をじっと守るように佇んでいる。私は腰まである黒髪をひとつに結って、それからサングラスをして厚底のブーツを履いているのだが、たぶん外から見れば私たちは父と娘のように見えていると思う。

実際は女優とボディーガードなんだけどね。

　宮坂蕉雨っていうのは芸名で、多分本名はナントカAとかだった。多分というのは私がいわゆる戦争孤児で、記憶喪失だからだ。記憶喪失っていっても、唯一自分の名前だけは分かる。誰かが私のことを、記憶を失う前はそう呼んでいた気がするから。自分がホントは何歳かは分からないけど、とりあえず12歳だと自称している。それと顔立ち的にハーフかなんかだと思う。戦争中にどこかの国の軍人さんと軍系の看護師さんがくっついてどっちも亡くなっちゃったのかなあと軽く考えている。


　3年前くらいまでは孤児院にいたんだけど、ある日院長と外出した時に芸能界にスカウトされた。子役は泣く演技をする時にもし自分の親が死んだらー、とかもし自分がいなくなったらーとか考えるらしいんだけど、私はそんなことしなくても出そうと思えば涙を出せたし、面白くなくても自然に笑えた。雑誌の見出しには天才子役だって。私はそんな演劇が、いつの間にか切っても切り離せないくらい好きになっていた。


　意外と戦争孤児って多くって、父母がどこかに居るのかは知りたいけど、ほぼほぼ諦めてる現状。だって、もし生きてるんだとしたら、こんなに可愛い娘が毎日テレビに出てるのに気付かずに迎えに来ないなんてこと有り得る？


　会計が終わり、得意げに鼻歌を歌いながら、かつスキップなんかしちゃってコンビニを出る。ボディーガードを隣に据えつつも、先程の女子高生二人組がまだ私が映っているバラエティ番組に釘付けになっているのを発見した。



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