22.のうのうと生きる代償は ページ22
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ソファーまで数歩であるにも関わらず、立つ気がどうしても起きなくて膝を抱えて蹲った。
その時、唐突に手持ちの電話が鳴り響いた。
「組合の異能力者の能力と絡み合ってQの異能力が暴走してやがるッ、このままじゃヨコハマが終わっちまう、できる限りでいい、結界を張れッ!」
珍しく息が切れている中也からの電話だった。その言葉にサッと顔を青くする。こんな場所で座り込んでいる場合ではないと悟り、幹部室からダッシュで外へ出た。
出ようとした。
「なにこれッ、」
これがQの精神操作の破壊力か。さっきまでこんなんじゃなかったのに。
ポートマフィア出口側にべたりと頬に青い手のついた人々が狂ったように銃を無差別に撃っている。黒服ゆえこれはマフィアだ!マフィアといえども異能力者以外は無力だ、現にうさぎのように物陰に隠れている人達が多数派だ。
「みんな下がってッ」
これはQの異能を食らった人物とそれ以外とで亜空間を分ける必要がある。大変な作業だ、一人でも誤れば全滅する可能性も抑えきれない!
立方体の亜空間をそれぞれに投射する。
『わたしがお兄ちゃんより弱いように、わたしより弱い人もごまんといる。だから私は、その人達を守ってあげようって決めたの』
これはいわば本心だった。人の喜ぶ顔が好きで、だから演劇が好きだった。
『あなたほど嫌われることはないね、久作君って本当に可哀想。いっそ生まれて来なければ良かったのにね』
そしてこの状況は、彼を刺激したわたしに非があるとも言える。サイアク、サイアク、最悪だ!
「1階を封鎖するっ!2階以降には絶対に通らせない!」
そしてこの作業はマフィア内だけじゃない、ヨコハマ全体を見回る必要がある。
どんな偽善だっていい。ぶっちゃけわたしは演技以外苦手だ。異能だって使えないし、性格だって悪いし、頭だってそんなに良くない。だからせめて態度で示そうと思った。自分が悲しませた国民にそれで謝罪ができるならそれでいいと思いたい。
なんとかマフィア本部から外へ出た。黒蜥蜴や遊撃隊の面々が正面からやってくる。
「広津さん、車貸して!」
わたしに出来る最善を尽くす。今は、それだけだ。
立原くんがなんだか言っていた気がしたが、ぶっちゃけそれどころじゃなかった。
別に死にたいわけじゃない。寧ろ死にたくないから、こうして醜い猿芝居の演劇なんか続けている。罪を償わずに、わたしは今日ものうのうと生きている。
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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時