3.世界破壊 ページ3
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「残念なことに、わたしには興味が無いみたい。二つ年上なの。実はね、わたし、むかし演劇をやっていた時期があったの。でもダメだった。あの人の前で、嘘は吐けない!演技なんて出来なくなってしまうんだ」
「もう何年も会ってないから、顔も変わってるかも。彼も成長期だったから.........身長だって高くなってるかも。生きてるかもしれないし、もしかしたら死んじゃってるかもね」
立原くんの顔をしっかりと見つめつつそう薄く微笑を称えれば、彼は気まずそうに目を逸らす。琥珀色の瞳が一瞬だけ揺らぐ。ポートマフィア、黒蜥蜴に属する青年。ヤンキーのように柄が悪いのに、時に中原中也のような気遣いを見せることがある。
琥珀色の中に見えるのは、ひとつの正義を保ち、忠義を貫く何かしらの意思が見えるような気がする瞬間があるが、気の所為だろうか。個人的には
「こんな話しちゃってごめんね。仕事に戻ろうか」
そんな時、無機質な音楽が、スーツのジャケットのポケットの中から聞こえてきた。着信。
『森鴎外』。
立原くんに目配せをして、即座に幹部室から退出するように促す。彼が急ぎ足でほとんど二秒足らずでこの空間から去っていき、閉じられる扉の音を確認して、電話口に出た。
それから数分後のこと。ああ、携帯の画面を暗くし、倒れ込むように椅子の中に深く沈んだ。
「生きてて、良かった……」
心の底から、安堵して息を吐いた。
これは、演技なんかじゃない。
ポートマフィア最年少幹部であった太宰治が、武装探偵社にて生存を確認された。
「あなたの存在は、きっと世間の役に立つから」
本当に、良かった。行き場のない思いを注ぎ込むように、スマートフォンを音の軋むくらいに強く握り締めた。
止まっていた歯車がまた、回り始める。
怪奇ひしめくこの街。
これより始まる怪奇譚。
これが先触れ、前兆し。
彼女の名前は、中原A。
異能力『ふらんす物語』。
彼女はその異能を、まったく誰よりも忌み嫌う。
「太宰くんだけが、
膝をついて祈るように、鴉のように真っ黒な睫毛をはたりと落とした。
鳩のごとく素直に、蛇のごとく慧く、だなんて今更できやしない。
どろりと煮え切った暗い重りが、瞳のアイスブルーの邪魔をする。
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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時