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19.恐怖にくるまれる ページ19

*


 太宰は後輩の救助の為顔を真っ青にして表の方へと走り去っていった。いいなあ、とAの唇は動いた。音は出なかった。なあんにも。ただ空中に線を描いただけである。

「......A準幹部は、あの男を好いていると聞きましたが」

「うん、大好き。顔もスタイルもかっこいいでしょう?頭が良くて、それでもって異能力なんて特にステキ」

「異能力を無効化する異能力......でしたか」

「そう。私ね、異能力が嫌いなの。だから、太宰くんのソレ、すごく素敵!異能力のない世界を作るのに、すごく役に立つでしょう?素敵だと思わない?」


 樋口も銀も、思わず顔が強ばった。
 この人はどんな思想を説いている?
 好意?好意なんてウソだ。まるでその言い方では、彼を「利用」しているようにしか思えない。


「なんてね、ウソウソ!」


 まさに鶴の一声。一転してからからと笑いあげる様子に、隣にいた銀はほっと胸を撫で下ろしたが、樋口一葉は恋する乙女である。
 一瞬だけ、上司のボロが見えた気がした。明らかにおかしい。道化にしても、恋慕している相手を利用するような発言は出てこないはずだ。これはかりそめの恋なのではないか。もしも真実の恋なのだとしても、歪すぎる恋だ。
 なにより、彼に失礼だ。

 以前にこの人は自分を助けてくれたことがある。
 アレはこの人なりの親切心からと思っていたが、本当はなにを考えているのか全くわからない。
 そう考えた末、次に樋口を襲ったのは地から湧いてくるような恐怖だった。
 この人の強大な異能力は、きっと誰でも殺すことが出来る。つま先ひとつで他人の命を蹂躙できる。
 そんな人が、仮に感情の読めない人物であれば。


「......あなた、本当に人間ですか」
「......え?なんで?」


 あ、先程までの考え、すべて杞憂だったかもしれない。樋口は思った。
 あまりに素っ頓狂な声。ぽかんと口を丸く開けて、首を傾げて、まるで何も分かっていない幼児のような顔。あまりにも無知そうな顔。
 ああ、妙な邪推をしてしまったかもしれないと樋口は頭を抱える。この人は優しくて可愛らしい準幹部兼幹部補佐。何も心配することなんてない。
 そもそも敵方の「機械人形」なんて独り言に変に反応してしまったのが良くなかった。今後反省しよう。



*

20.説教タイム→←18.劣化



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宮古みなこ(プロフ) - 黒灰白有無%さん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません😭キスが精一杯のプラトニックラブを描いているつもりなので綺麗な物語と言って頂いてとても嬉しいです!私もごごりのシーンは懲りました!内容は超考えてるので更新頑張ります!本当にありがとうございます。💦 (9月29日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無%(プロフ) - 失礼致します題名に惹かれまして1から拝見為せて頂きました!綺麗な物語というイメージが大きいです.ゴー/ゴ/リとの絡みが特に大好き過ぎます!!綺麗で且つ迚も面白かったです!!続きも楽しみに仕手おります無理は為さらないで下さいね.これからも応援しております!! (9月15日 15時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮古みなこ(プロフ) - 風花さん» ちょうど読み返していたところでした❗️コメントを頂きありがとうございます。現在続きを作成中です!!!待っていて下さって大変感謝しかありません。もう暫くお待ち頂けると嬉しいです!前作に引き続きありがとうございます! (9月4日 23時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
風花(プロフ) - やはりこの作品は面白い!!続きを楽しみにお待ちしております!! (9月4日 12時) (レス) id: 093315c16a (このIDを非表示/違反報告)
kurumi - こちらこそ、返信有り難う御座います。しょうう、と読むのですね。どうも、人名を読むのは不得意なものでして…😅 (8月19日 10時) (レス) id: 36a2ebbf69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:砂糖やよい x他1人 | 作成日時:2023年7月11日 21時

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