どうやらわたしは思い通りには生きられないみたいで【文スト】

15.あげた株が地に落ちる ページ15

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　組合が派遣してきた外国の異能力者であるモンゴメリちゃんとやらのやたらファンシーな異能空間に、何故か首領と引きずり込まれたわたし。そんな中、わたしは武装探偵社の人虎こと中島敦くんとやらの活躍を拝見しに首領の背中に引っ付いて『マチイシャノムスメ』の役をした。そんなこんなで敦くんはそれ相応の働きを見せてモンゴメリちゃんの異能空間を突破し、我々も元いた交差点の真ん中に戻されたのだ！説明終了！


　あの、とおずおずと此方に声をかけてきた彼の方をじっと見遣る。にっこりと笑いかけると、彼の顔が瞬く間に真っ赤に染まっていくのが分かった。若くて可愛いな。これが太宰くんの後輩かあ、と首領が彼に励ましの声をかける所を脇目に見ながら考えた。

　そんなとき、敦くんの傍に駆け寄った一人の少女がいた。泉鏡花くん。元マフィアの裏切り者で、彼女とは少々縁がある。サッと顔を青くして俯く鏡花くんに少しでも慈愛の声をかけることは許されない。
　縁があってもなくても、彼女は裏切り者だ。
　......そう考えると太宰くんって、別枠なのかな。


「首領、良かったのですか。強大な異能力者の彼女を殺さずとも」
「探偵社の人虎に不審がられる方が脅威だと私は思うからだ。メラビアンの法則を知っているかね？別名『7-38-55ルール』。今述べた順番が言語情報、聴覚情報、視覚情報の、コミュニケーションを取る際に影響する割合だ。虎は聴覚に優れているし、ただの町医者だと説明して好感を得たのに少しでも訝しがられる行動をとってはいけない。ああ、どうだったかね、私の名演技は」
「100点です」
「本音は？」
「100点です」

　
　頬骨のいちばん高いところを桃色に染めて、前後変わらず朗らかに笑ったわたしに、首領は「今の君の演技、52点」と道化て見せる。
　彼の琴線に触れない程度に口出しをするとなると、と顎に手を当てて考えた。正確にはこれはわざとらしい動作で、この動作をすることによってわたしは「考慮している」ということを示す。指先の神経一つ一つに気を配るのだ。


「しかし首領。わたしには現在人虎からの信頼を得る価値が理解できません。隣にいた泉鏡花からポートマフィアの首領である真実をバラされれば上げた株も地に落ちるものでしょう」
「さっきも言ったじゃないか。Aくんの為に噛み砕いて説明しよう。人は第一印象が大事なのだ。聴覚の鋭い虎ならその倍。良い奴だと信用してくれるとは思わんかね」


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