【歌い手】能力なんかなくたって

犯人の正体 ページ30

目の前には、響希さんの後ろ姿と皆の無惨な死体








それに私は当然目を見開いた







響希さんはゆっくりと私の方を向く








！……





頬に血がついていて、痛々しかった







響希さんのその目はまるで、悲しみや憎しみを抱いたような目








「A……ごめん」







いつもより低い声でそう告げる響希さん








響希さんの手から血が出ているということは彼女が自分で殺したのだろうか








でも、彼女はそんな人間じゃない








『……ど、どうして、皆が……』








それより皆が倒れている様を見て私は座り込んだ








「……ごめん、ごめん、ごめん」






響希さんは前を向いてうつむき、拳をぎゅっと丸める






響希さんの下の床には滴がこぼれているため泣いているのだろう








「皆がっ、皆が、Aのこと……」









響希さんが途切れ途切れにいった言葉は残酷だった







ーーーーーーーー




「……棗、Aとはなれて」







「……え？」







「涼華さんは危ない人なんです」







「な、なんで？危なくなんてないよ？」







「Aっちの能力が危ない。Aっちに殺される前に早く逃げよう」








「ど、どうして？」








「初めから涼華さんって怖い人だと思ってました」





「それな、クールだし」





「うんうん、うちらもぶっちゃけ








きらいだったんだよね」




　


「！……」








「響希……さん？」







「ｷｬｧｧｧｧｧ!!!」






ーーーーーーーー






『それじゃ、響希さんは私を？……』








気持ちが入り交じる




本当はあの人たちは私のこと嫌いだった？






響希さんは私を守ってくれたの？







「ごめん、ごめん！……わしの能力、わからなくなっちゃった……」







鼻声で背中を向け、すすり泣く響希さん







……もしも皆が私のことを嫌っていたのなら、








響希さんはまもってくれたんだよね、








私はゆっくり立ち上がり、１歩１歩響希さんの方に向かった









すると









「来ないで！……」








突然蹴られる







私は響希さんの足を腕でつかんで、床に下げてあげた







そして驚く響希さんを抱き締めた








『大丈夫、安心して、怖がらないから、








……文字、見せて？』








すると響希さんは安心してくれたのか頷いた

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