50 ページ50
固く結ばれていた手は柔く開かれており、息をする音が聞こえなくなってしまった。
頬に手を当てると人間とは思えないほどに冷えており、生き物の温かさを感じられなかった。
脈を測りながら乱れた髪を掻き分けてオスマンの目を確認する。
脈はピクリとも動いておらず、瞳孔が開ききっている。
これは、。
A｢あ、あぁ、、オスマン、が、、。｣
死んだ。
目の前でオスマンが。
理由が分からない。
原因が見当もつかない。
今のうちの頭は混乱するばかりで正常に機能していなかった。
しかし、ふと目を向けた先のティーカップに意識を奪われた。
もしかして。
A｢紅茶、、。｣
ティーポットに入れられた紅茶の匂いを嗅ぐ。
微かに薬品の香りがした。
毒でも盛られたのだろうか。
しかし、これくらいなら外交官であるオスマンが気づかない訳が無い。
それに、この紅茶を用意したのはオスマン自身であり、茶葉もポットもカップも全てオスマンの私物であり、自分で持ってきたものだ。
正直、この状況で毒を盛れるとしたらうちくらいだが、誓ってそんなことはしていない。
なんならオスマンの入れた紅茶のいい香りで目が覚めたくらいなのだ。
では何が原因なのか。
ut｢A、ちゃん、、？マンちゃんは、、。｣
いつの間にか着いていた大先生に声をかけられて、なぜかは分からないが涙が溢れてきた。
安心したのか、はたまた疑われるかもしれないという恐怖を感じたからなのか。
とにかく号泣した。
A｢ふ、うぅ、、だい、せんせっ、、。オスマン、がっ、。｣
ut｢・・・あかん、。｣ﾎﾞｿｯ
泣き喚くうちをあやしながらもオスマンの元に近寄って確認を始めた大先生。
眉間に皺を寄せてぼそっと呟かれた言葉に、脱力感と絶望感を感じる。
大先生はすぐにインカムを繋ぎ、誰かに連絡を入れていた。
すると数十秒後にシャオロンが入ってきた。
オスマンの変わり果てた姿に驚愕しながらも、シャオロンはうちの目と耳を塞ぐように抱きしめてくれて、そのまま医務室を離れた。
シャオロンはずっとうちのそばに居てくれて、落ち着かせてくれた。
gr｢辛かったな。｣
いつの間にかうちとシャオロンの前に来ていたグルッペンは、うちの前に跪いて手を掬い、目を合わせた。
眉を下げ、穏やかな表情を浮かべるグルッペンを見ると、入っていた力が抜けた。
gr｢A、？、、Aっ、！｣
紅茶を一口貰ったことを忘れていた。
抜けた力が戻ることはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 356人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れぬ - まじでこの作品大好きです…!! (2月13日 18時) (
レス) @page43 id: 0a59a20f0d (このIDを非表示/違反報告)
ずみ - わあああ！！！更新！！！更新来たーーー！！！！！！！きゃーーーー！！！𝑩𝑰𝑮𝑳𝑶𝑽𝑬────────── (2月13日 2時) (レス) id: 7407db3b93 (このIDを非表示/違反報告)
鯛焼き - 次こそは、次こそはってどんどん見てしまう、、、 (1月18日 19時) (レス) @page33 id: 5f87212f07 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念ゴミ(プロフ) - なんか結構だいぶ超好きだわ (1月17日 10時) (レス) id: bde2ec8f8b (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - 多分、ループの終わりは国が滅亡しなかったら、、な気がしてます。ただ、ループの終わりに彼らの中にどんな記憶が残って、ループの終わりに主人公が彼らを信じていられるのかは、、、、わからないですね、、、。 (1月12日 20時) (レス) @page27 id: c71ab18fe4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おーるんご。 | 作成日時：2023年12月29日 23時
