成り代わり杵の突撃！隣のブラック！-2

CASE3-31 ページ10

三日月がいなければ俺単独での本丸移籍は随分難易度が高くなっていただろう。
本丸に来てからも、三日月がトラウマや痛々しさを出してくれたお陰で、警戒心が解けたようなものだ。俺一人なら多分こんなに早く解けてない。

「別に俺に依存すんなとは言わねぇよ。ただ、」
「それでも」

なるべく優しく言い聞かせるように話していたのを、強く遮られる。
勢いよく顔を上げ、そのままきっと睨むような視線を向けられ、少し驚いた。
その瞳には強い意思がある。
先程までのぐちゃぐちゃとした目ではないが、それでも健常者の目とは言い難い。
けれど、その目はとても真っ直ぐだ。
先程までの幻想的な、人間離れした芸術品としての美しさではない。
人間らしい、感情が篭った美しさだ。

ぶわり、と背中に悪寒が走り、嫌な予感がした。
この言葉の先を言わせてはいけない──そんな、気がして。

三日月の口を抑えようとした時には手遅れだった。


「しても良い。俺にこれが愛なのかどうなのかは分からない。でも…きっと、すれば…俺は、お前になら、何をされても」

「これは、愛じゃないのか？」

「確かめるためにも、お主としたいといってしまうのは、許してくれるのか」

「…きっと、俺は、お前となら、永遠の伴侶にでも、番になっても、構わないと思うのだ」


「……………………………………まじで？」

そう言われて、たっぷり三秒は経ってから思考は動きだした。
つまりあれか。
こいつ捨てられないためとかだけでしようと思ったんじゃなくて、恋愛なのかどうか確かめるとか

嘘 だ ろ お 前 。

今度こそ、頭を片手で抱えて長く、長く息を吐く。
口元が引き攣るのを抑えられそうに無い。

「えー…お前、えー…あ、そういう感じ？そういう方向で行くの？うわマジかよ…」
「…たしかに、錯乱していたのは認めるが…その、流石に、それだけで…無理矢理はせんぞ」
「えっえっえー…そうくる？そう来ちゃう？えーマジかよぉ…」

割とガチで混乱中である。
三日月はそう言うと顔を赤らめ、視線を下に逸らす。
まさか平常心に戻すとこうなるとは、とんだ罠だ。

「あー…うわー…えー…」
「…そんなに、嫌か」
「嫌っつーか、そういうつもりはねぇからなぁ…えー…じゃあ好きっていうのは？」
「俺は生憎刀ゆえ、恋愛感情を持った事がない。分からんが…お前になら大丈夫だと、安心だと思ったのだ」
「うっわぁー…」

そう言われると、途方に暮れてしまう。

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