成り代わり杵の突撃！隣のブラック！-2

CASE3-33 ページ12

そう言えば、ついに膜を張った涙がつうと目から流れ出た。
うぇ、そこまで悲しかったのか。
まあ割と酷いこと言ってるのは自覚してるんだけど。
好意を伝えたら答えがYESでもNOでもなく、好意の否定。本心は煙に巻こうとしてる。
うわ最低だな俺。

「あーあー…だったらさ、あー…」

流石に見てられなくて、指で流れ出た水を、肌を傷つけないようになるべく優しく拭う。
いや、これだと問題の先送りになるだけってのは分かってるんだが、な。


「もう依存してないって確信できるくらいになってからさ、もう一回自分の気持ち考えてみようぜ」

三日月は目を瞬かせる。
俺は苦笑した。

「その気持ちが本物だって言い切れるならさ、俺もちゃんと考えるから」

そう言えば見る見るうちに三日月の頰に赤みが差し、顔が歓喜に満ちる。
こういうこと言うのは柄じゃ無いし、自分で言ってて何かもう…気持ち悪いが、まあこれなら大丈夫だろう。
こいつが自分から依存を抜け出せる意欲を作ったし、この場も上手く躱せた。一石二鳥だ。
ただ未来の俺がどうなるか大分心配だが。

「手杵や、手杵や」

そう言って泣き笑いで目尻に涙を溜めて、目を細めて手に子猫のように擦り寄ってくる三日月を見る。
その顔は緩んでいて随分と幸せそうだ。

だがまあ…なるようになるだろう。
別にこいつのことは嫌いじゃない。俺がこいつに対してどう思うかがこれから変わっていく可能性もある。
もうどうにでもなれ。




○○○



「御手杵さん、昨日、その…」
「ん？…あっ、何もないぞ。マジで。断じて寝不足になるようなことはこれっぽっちも起きてないからな」
「そう、なの？」
「本当本当」
「…確かに、そうみたいだね。宗三兄さまにも伝えてこなくちゃ」
「えっ小夜ちょっまっどこまで伝えた！？」

小夜と宗三以外には伝わってなかった。
ここ最近で一番焦った瞬間だった。

宗三にも三日月が俺に迫った、ということしか言ってないらしいので、俺は三日月の好意に何も気付いていない鈍感設定の御手杵で行こうと思う。
多分"御手杵"としてはこれが自然だろうし。
好意というか依存だけど。

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