月の私と雪の蝶 [蛇王カイラ]

雪の蝶２ ページ2

｢暇……。｣


ポツリと呟いた声は小さな部屋に響く。








今日も雪の蝶を眺める。






｢掃除でもするかな。｣





窓を開ければ、一気に風が吹き込む。

今日は風が強い。






｢Aちゃん、掃除するならリビングもお願いね！｣

｢あ、はい。｣






私は学校に行っていない。

学校よりも、蝶の方が大切だから。





蝶だけが、私の味方だから。








｢掃除機どこですか？｣


｢え、物置にない？｣


｢ありません。｣



｢じゃあ、ぞうきん買ってきてもらえる？ リンゴも何個か。｣


｢わかりました。｣




バスケットにお財布を入れて、家を出る。







そういえば、ここ１週間外に出ていなかった。




どうりて外が恋しかったと思えば。









｢ありがとうございましたー！｣



お店の人の営業スマイル。


両親をなくしてから、私は笑っていなかった。






｢あの、営業スマイルってどうやったら出来るんですか？｣


｢え……？｣



突然の質問にあたふたする店員さん。





｢えっと……感謝するときについ出る笑顔……かな？｣


｢そうですか。｣




感謝なら、何回もしている。




私の今の家は民宿をやっているから。





｢感謝……。｣






とぼとぼ歩いていると、目の前にフラフラした妖怪が歩いてくる。







｢え！ ちょっと大丈夫？｣


｢……人間？｣






人間だと気づくとその妖怪は後退りする。





｢来るな！｣


｢ええ……。｣





その妖怪はとても変だった。






夏なのにモッフモフのマフラーをつけていて、

マフラーをつけているくせに半袖。




完全に周りから見たらアウトな格好をしている。




｢貴様、私が見えるのか？｣

｢見えるも何も、私人間じゃないですから。｣



｢そ……そうか。｣





急に安心した顔になる妖怪。






｢すまない。人間だと思い、焦ってしまった。｣


｢はぁ。｣





｢私は蛇王カイラだ。貴様はなんと言う？｣



｢ああ、Aです｣







｢しかし、お前ほど人間に似た妖怪は初めてだ。化けているのか？｣


｢いえ、私は８割人間なので。｣



｢半妖か。｣



｢惜しいです。半妖ではありません。｣








しばらく話してハッと気がつく。



周りから見たら、一人言言っているようなものだ。






｢貴方の傷の手当てもありますし、私の家まで来てください。｣


｢そうか。傷はともかく、お前の話の方が気になった。行くとしよう。｣

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