虹ヶ原リバーハウス５ - JW

197 恋なんて ページ9

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- side Kiriyama -




22歳の頃、付き合ってた彼女がいた。


俺の部署に配属された、3つ下の後輩。



愛嬌があって、一緒におると楽しくて、大好きな子やった。


結婚もこの子とするんやろな、なんて考えてた。



当時俺が住んでいたひとり暮らしのアパートは、彼女が住む実家に近かった。


余裕のある朝はモーニングコールをして、会社は俺の車で送ったりして、週末はメシ食って俺の家に帰る。


何かあれが好きだのあれが欲しいだのと言ったのを聞けば、何かの時にプレゼントしようとメモった。



春先に部屋の更新があったから、タイミングも良いし、ふたりで住む部屋に引っ越そうと提案した。


その時やった、彼女と考えが違うってわかったのは。



『同棲？ 嫌や、そんなん』


『なんか結婚するみたいやん。あたし照史と結婚する気ないし』


『結婚とか考えてたんやね。あたし19やしさ、まだもう少し遊びたいねん』


『正直最近重いなーって思っててん。この機会に別れるのもええかもね』



驚いたし、悲しかった。


何より、相手を思ってやっていたことが重いって思われとったのが一番キツかった。



案外俺たちは呆気なく終わった。


文字通り抜け殻のようになった俺に声をかけてくれたのが淳太くんで、シェアハウスが出来るから住まへんかって。


それで、今に至る。



もう恋なんて出来ひんやろなって思っとった。


そんな時にAがこの家にやって来て、俺はいとも簡単に恋をしてしまった。


住人全員がAに惹かれてるのがわかって、早く俺も動かんと取られてまうって思った。


でも、また行動が全て『重い』のひと言で片付けられてまうんやないか。


そう考えて、二の足を踏んでいた。



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