181.些細な願いから ページ32
その後、食器を片付け、お茶を二人で飲みながら会話に入る。そばには和菓子もある。本当に日本にいるかのようだ。
ht「ここは…どう？」
少し不安げに問うひとらん
彼なりに多少心配だったのだろう。突然、しかも半ば強引に連れてきたのもあるが、この空間がAの故郷に近いなら、喜ぶより悲しませる可能性も大いにあると彼自身分かっていた。
Aは和国の文化に近しいものをよく好んでいた。その為喜ぶ確証はあった
お粥も美味しそうに食べていたし、以前綺麗だと触れてAが枯らしてしまった花は和国の花だった。他の花には目も向けず駆け寄っていき、悲しそうに微笑んだ後、優しく触れたAの姿を彼は今も覚えている
ひとらんが、なぜあの花を真っ先に見に行ったのか聞いてみると、彼女は自分のいた所にあった花と似ていたからだと、見た時はとても驚いたと"明るく"言っていた。
つまり、彼女が悲しそうにしてたのは、あの花が故郷の花と"似ているようで違っていた"からだ。
だが、結界の外にある和国の植物は、そもそも実際の和国での状態では無い。育った環境が違う。要は本来の姿とは多少違うわけだ
Aは質問に対して、悲しいとは真逆の雰囲気で答えていたが、ひとらんはAが悲しそうにしていた理由には気がついていた
だから早く見せたかったのだ。この空間なら外よりかは、はるかに和国に近い状態の植物が育っている
加えて和国は日本人が作った国。それなら和国に近いこの空間には、Aの故郷に近い物もあるかもしれないと思ったのだ。
ひとらんはAを喜ばせたくて、既存の植物に加えて更に、この空間を和国に似せようと様々な工夫をした。料理もそうだ。しかし、喜ばす前にまず泣かせてしまった。
それは、この空間が、物が、Aが込み上げてくるほど、故郷に近しいものであった、と言えると同時に、"思い出させてしまった"とも言える。
可能性を考えていなかった訳では無い。しかし、やはり先走ってしまったと不安になっているひとらんに
Aは、ここはとても居心地がいいと、安心すると、日本にいるようでとても嬉しいと"明るく"素直に語った。
Aにとっては感謝の言葉。しかし、ひとらんにとってその返事は、成功を意味すると同時に、Aが"まだ"弱音を自分達に言えない現状があると知るのには、十分な回答だった
ht「そっか…ゆっくり休めそうなら良かったよ」
彼は少し寂しそうに微笑んだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1062人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眼鏡が似合わない人 - とても面白いです！これからどうなっていくんでしょう？いいところで切れてしまってるので、続きが楽しみです。無理せず頑張ってください。 (10月11日 17時) (
レス) @page50 id: bf3237f3d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - めちゃ好きな物語です！続編楽しみにしてます！続編できるまで繰り返し読みます！ (9月9日 13時) (レス) id: f95f0b76ce (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - はあもう好きすぎて無理 (8月26日 2時) (レス) @page50 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します！むちゃくちゃ好きです… snpi神が布着けてなかった事を初めて布着けた場面の時に知ったバカですどうも(( 更新頑張って下さい。楽しみにしてます！ (2023年3月5日 18時) (レス) @page40 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (2022年12月11日 0時) (レス) @page36 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Zete | 作成日時：2022年2月7日 10時
