衝撃の事実と増える来客【痣路不】 ページ44
その名は、妖の世界で広く知れ渡っている伝説の妖怪。その力は強く、恐ろしく、この世を滅ぼすことも出来るほどだ。
そんな妖怪が、未熟だった俺に妖力を分け与えてくれていたというのだ。俺に会いたかったと言ってくれたのだ。
腹の中でぐるぐる巻き起こる様々な感情。一言で言い表すのなら、そう、混乱だ。
「え、あ…鬼灯、様…」
ハッと気が付けば、その�には涙が伝っていた。
柄にもなく、慌てふためく。
「な、泣かないでください。その、えっと…」
慰め方がわからない俺は、先ほど白犬にやったようにその涙を指ですくいとる。
「あなたに涙は似合いません。どうか、どうか笑ってください」
そう言った直後、遠くからは「あのー!」という馬鹿でかい声が響く。
さっきから色んなことが起こり過ぎている。犬と再会したと思ったら昔俺に妖力を分け与えてくれていた安心するあの気配は伝説と呼ばれるほどの大妖怪で遠くからは人間がこちらの方に呼びかけている。
なんだか頭痛がしてきた。
「…白犬、あそこにいるうるさい人間に何の用か聞いてきてくれるか」
白犬にそう命令したが、ふと思いついたこともそのまま口に出した。
「嗚呼、あと、お前が構わなければなのだが…また前のように、俺の家で俺の世話をしてくれ。お前がいなくなってから何かと大変でな…だが、強要はせん。お前の好きなようにしろ」
いまだ泣き止まない鬼灯様の頭を撫でさせてもらいながら、白犬を人間のもとへ行かせた。
「…あー、鬼灯様…」
そして、ずっと気になっていたことを鬼灯様に投げかけた。
「何故こんなところにいるのでしょうか。それと…いらないと思いますが、これを」
そう言って、右ポケットにいつも常備している深海色のハンカチを鬼灯様に渡した。
5人がお気に入り
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
浮遊中のキノコ猫 - 天音さんが終わったらコメントします! (2018年7月1日 14時) (レス) id: ab1536bd99 (このIDを非表示/違反報告)
天音(あまね)(プロフ) - 更新しまーす! (2018年7月1日 3時) (レス) id: 6b8e28c33a (このIDを非表示/違反報告)
痣路不(プロフ) - 終わりました〜 (2018年6月30日 23時) (レス) id: 608e22f9ed (このIDを非表示/違反報告)
ユリ夜桜(プロフ) - 痣路不さん» 終わったからどうぞー (2018年6月30日 22時) (レス) id: ee2faa79c0 (このIDを非表示/違反報告)
痣路不(プロフ) - では、ユリちゃんが終わったら私も書きますかね (2018年6月30日 22時) (レス) id: 608e22f9ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ